――48 ページ38
.
「はい、たぶんすごく忙しくなります」
カチ、とキーボードをたたいた櫻井さんの手が止まる。
それから椅子に座った身体を私の方へ向けた。
なんとなく、私は背筋を伸ばす。
「だから、これからも雛田さんにはお世話になると思います」
「……あ」
「もっと忙しくなったら俺余計家散らかしますから。雛田さんいないとごみ邸みたいになっちゃうし食事できないんで」
冗談めかしてそう言うと櫻井さん「よろしくおねがいします」とぺこりと頭を下げた。
面食らっていた私は数秒遅れて頭を下げる。
「こちらこそ、ぜひよろしくお願いします」
えっと、つまり……。
「今後も雛田さんで契約させてもらいたいんですけど大丈夫ですか」
「それはもちろん、ちゃんと調整します」
「よかった」
ふわっと櫻井さんの顔がほころぶ。
私はドキドキと鳴る心臓の鼓動を感じながらなんとか笑顔を返した。
いったい何を言われるのかと思った、という安堵と。
これからも櫻井さんの傍にいさせてもらえるという嬉しさと。
ほんの少し、何かを期待するような気持ちと。
いろいろと混ざって落ち着かない心を深呼吸で整える。
櫻井さんはすでにパソコンに向き直ってしまっている。
こっそりと、小さく息を吐いて私は切り終えたじゃがいもを水を張ったボウルに放り込んだ。
と、そこでもやりと心に浮かんでくるものを見つけて私は櫻井さんを見る。
櫻井さんは私の視線に気づいたようにふっとこちらを見た。
「雛田さん？」
「あ、すみません……あの……」
目が合ってしまって私はとりあえず口を開く。
こんなこと聞いていいものかわからないけど。
でも……気になる。
「その料理のお見合い……櫻井さんも参加されたりするんですか？」
「え、どうして？」
きょとんとしたように櫻井さんが聞き返す。
私はどうこたえるべきか悩みながら、ごにょごにょと言葉をつづけた。
「その……結婚のご希望があるのかな……と……」
今までの櫻井さんの言葉を聞いていると奥さんのいる生活に憧れているような節がある気がして。
私は控えめに櫻井さんを見つめた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 793人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
iCHiKA(プロフ) - のりさん» はじめまして！まだなんですよ〜、今しばしやきもきしてください。甘沈以来なんとなく使い続けている言い回しですが、実際〇〇の部分のために組んだお話だったりもして、意外としっくり来てたりするもので。まさか気に入ってくださる方がいるとはとても嬉しいです。 (2021年4月17日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - shiさん» ようやくいいところまで言ったんですがね、あとちょっとお預けです。移行先では新たな展開なので、もうしばらくやきもきしてもらえたらと思います！ (2021年4月17日 20時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - こんばんは。まだ言わないんですか！？と思わず声に出してしまったことだけをお伝えしたく初めてコメさせて頂きました。初コメの勢いで、こちらも他のお話でも『○○したいだけのお話です』という行が好きです。という告白もさせて頂きます。 (2021年4月15日 21時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - こんばんは！！翔さんいい所まで言いましたね(^^♪ ヤキモキしながら見守りたいと思います！！移行楽しみにしています(^^) (2021年4月15日 21時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - きーちゃんさん» はじめまして、コメントありがとうございます。きゅんきゅんしていただけましたか？そのお言葉がとても嬉しいです！Sさんが格好良く映っているようでしたら光栄に思います。 (2021年4月13日 21時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：iCHiKA
| 作成日時：2021年3月2日 14時
