ビニール傘に恋恋－佐野玲於－ (ページ10)

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［ You're side ］

『いちお、冷えピタ貼らせてもらいました』

左頬を触ると、確かに熱さまシートが貼られていた。
もう効果はほぼないけど。

「ありがとうございます。
でも帰るときは剥がさせてもらいますね」

『…あの、理由聞いてもいいっすか？』

頬のこと…だろうか。

『頬のこともそうだし、なんであんなに傘買いに来るのか、今日は何があったのか。

ほぼ初対面の俺がこんなこと聞くのもどうかと思うんですけど、気になって』

回りくどい言い方をせずに聞いてくる彼がやっぱり可愛くて、

話す必要はないのかもしれないけどどうせ今後関わることはないだろうし、いっそのこと話してしまえと自分自身が言う。

「…私、昔からよくものを失くすんですよ
大切にしていればしているものほど、よく。

小さい頃に駄々をこねて買ってもらったヘアピン

友人からもらったお揃いのハンカチ

学生の頃に付き合っていた彼には、本心では大切にしていないから簡単に失くすんだよって言われました」

傘も一緒。

どうせ良い傘を買ってもすぐに失くしてしまうなら、コンビニの傘で充分。

「それでも今月はちょっと酷かったですね

仕事の取引先に置いてきたり、立ち寄ったカフェの傘立てに置いてきたり、ビニール傘なんてみんな同じだから傘立てに入れると自分のがどれか分からなくなって、もういいやって探すのを諦めちゃったり」

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