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先輩「いやさ、傘買いに来たときにレジで話しかけるなら分かるよ?でも あの状況はまずいって。関わんない方が絶対いいよ」

確かに先輩の言っていることは分かる。


頭の先から足の先までびしょ濡れの彼女は、コンビニ前のゴミ箱のそばで雨宿りをしている。しゃがみこんだその人はしとしとと降り続く雨の水溜りをずっと見つめている。
その表情からは何ひとつ読み取ることは出来ない。




『でも…今を見て見ぬふりして、今後何も知らなかったみたいに話しかけることなんて出来ないっすよ。俺』

先輩「…はぁ…」


そう言うと、先輩は何も言わずに俺の背中を押してくれた。



















『_______あのっ!』


意を決して話しかけてみるも、微動だにしないその人。




『あ、あの…大丈夫っすか?』

多少雨には濡れるが しゃがむその人の前に立って、もう一度声を掛けてみる。


「………」

ゆっくりと顔を上げて、その真っ黒な瞳で俺を捉えても何も言葉を発しない。






初めて視線が絡まったことで
胸が大きく跳ねたような気がした。





『えっと、俺ここでバイトしてるんですけど いつもビニ傘買いに来る人ですよね?』

「……かさ…」

『はい?』

「…今日はもう傘、ないんですか?」




先輩「…おい、傘の在庫のこと聞いてんじゃね?」

少し離れたところから様子を見ていた先輩が近づいてきて言う。




『傘?…え〜っと、ちょっと待ってて!!』




急いで店内に入り、入り口すぐにある傘売り場を見るとそこは空っぽになっていた。

" なに佐野くんまだいたの〜? "
なんて呑気に聞いてくる店長に「忘れもの!」と答えて、慌ててバッグヤードに入る。









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作者名:ちむー | 作成日時:2021年10月20日 18時

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