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[ You're side ]





「あ、えっと…

お礼にって買ったはずのものがなくて…




…どこに忘れてきたんだろう、ごめんなさい…」









本当に情けない

ものをすぐになくしてしまうと彼に話したのは
つい数日前のこと。


そして、今まさにそれを目の当たり(まのあたり)にしている彼は呆れているだろう。






社会人にもなって 自分のものはおろか、人に渡すものまでなくしてしまうような どうしようもなく情けない女。


私は何のためにここにやってきたのか…

情けなさと恥ずかしさから彼の顔を見ることが出来ないでいた。









『(人1)さん、顔(そら)さないでこっちを見てください!』

そう言うと彼は、顔を背けていた私の両頬に手を添えて
無理やり自分の方へと視線を合わせた。


突然のことでびっくりした私は目を大きく見開いて
彼を見るしかなかった。






『お礼なんてわざわざ用意してくれなくても全然よかったんですよ?今日こうして会いに…いや、俺に会えるまでコンビニに来てくれてたことがすっげぇ嬉しいです!


でも…もし、(人1)さんが 用意したものを忘れてきてしまったことに悲しんでるなら、今から俺とラーメン食べに行きましょ?』

「ラーメン?」

すごく素っ頓狂(すっとんきょう)な声が出ていたに違いない。
それほど私は気が抜けてしまうほどの衝撃を彼から受けている。




『俺、夕飯これからなんです。だから 一緒にラーメン食べて、そしたらそれを(人1)さんが奢って下さい、それでこないだのことは全部ちゃらです』



そんなことでいいんだろうか…

いまだ彼に頬を押さえられたままの私は
そのことを忘れて少しだけ悩んだ。






『もし嫌なら断ってくれてもいいっすよ?』

断らないと分かっていて聞いているのだろうか。






彼という人物を認識してから、たかが数日
時間にしたら数時間




ラーメンという言葉に気が抜けて、
男だからと関係なしに「奢って?」を言える。



少ししか変わらない歳の差でも、
その年下(・・)を上手に使いこなす彼は

長く、年上と付き合っていた私にはどこまでも新鮮に感じた。






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作者名:ちむー | 作成日時:2021年10月20日 18時

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