ビニール傘に恋恋－佐野玲於－ (ページ3)

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先輩「ま、あんだけ頻繁にビニ傘買ってんだからそりゃ買いに来ない日だってあるさ」

先輩が言った通り、この１週間ほど例のアノ人の姿を見ていない。

そりゃ言わんとしてることは分かるけど、なんで？
俺が意気込んだと思ったらパタンと途絶える？

先輩「俺とお前以外のシフトの時間に来てるかもしんないじゃん」

『そうですけど…でも！俺のときに来てくんなきゃ意味ないじゃないですか！』

先輩「あ〜はいはい、とりあえず今夜飲み行くか」

" そこでたっぷり話聞いてやるよ "

そう言って俺の肩に腕を回す先輩の顔はニヤニヤしていて、完っ璧に面白がっている。

(他人事(ひとごと)だと思ってこのヤロウ…)

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「お先でーす」
『おつかれさまですッ』

あがりの時間が同じ先輩と共にバイトを終えて裏口から出ると、ナイスタイミングと言わんばかりに雨が降り出した。

先輩「うげっ雨かよ〜。はやく梅雨終わんねぇかな〜、俺ジメジメしたこの季節きらーい」

先輩のそんな発言を聞きながら、どんよりとした空を見上げる。

『…梅雨終わっちゃったらもうアノ人に会えないんですかね…』

以前からここのコンビニを利用していたのかは正直覚えていない。最近になって彼女を意識するようになり、今ではもう頭から離れないほどに。

なんであんなに何度も傘を買うのかってことも、もちろん気になるのだけど

本音はあの、今にも死んでしまいそうな彼女の…心に引っかかっている何かを取り除いてあげたくて。笑うとどんな感じなんだろう、その笑顔が俺に向けられたらどんなに嬉しいだろうって。

あくまで【店員と客】としての最低限の会話しかしたことのない俺が、こんなことを思うのはおかしいのかな。

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