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[ You're side ]






「…最近、傘の購入頻度が多かったのは
ただ失くしただけじゃなくて、彼にあげているから。

私の家に泊まった次の日に雨が降ると、うちのビニール傘を持っていくの」




何食わぬ顔で帰る家には奥さんがいて。

そんな奥さんにバレないために、どこでも買えるビニール傘がちょうどいい。普通の傘じゃだめなの。怪しまれるでしょ?


「また買ってきたの?」って聞く奥さんに、笑いながら「ごめんごめん、どっか置いてきちゃった」なんて笑うのかな。






「借りるよ、なんて言うけど 返してもらったことはない。それでもまた来る彼のためにいつも傘を買っておくの」

『…辛く、ないんですか?』




いつか私もビニール傘みたいにどこかに置き去りにされたり、捨てられたりするのかなって 悲しくなることもある。

それでもこの時間が少しでも長く続くように祈ってた。




「あなたの言う通り

彼のことで喜んだり、悲しんだり
泣いたり、笑ったり。


すごくすごく、大好きだった…」




それでも、奥さんに呼ばれて行ったカフェには彼はいなくて。帰り際に奥さんを乗せた車を運転する彼をみつけて、今日 私と奥さんが会うのを知っていながら止めることも庇うこともしてくれなかったのが 全てだと受け入れた。



「…大切なものを失くしてばかりいた私が、今度は捨てられる側になった。って言っても 最初から私が1番になれるわけなかったんだけどね」

笑っちゃうよね、最初から無謀な恋だったのに。





『…泣きながら笑うなんて、ずるいっすよ』
" 抱きしめたくなる "


そう言ったけど、
実際に抱きしめることをしなかった彼はまだ幼い。







『…貴方を捨てた男なんかのために泣かなくていい

次の男が貴方の笑顔に恋をするかもしれないじゃないっすか』








抱きしめることをしなかった彼は、その代わりに


私のために泣いてくれた_______









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作者名:ちむー | 作成日時:2021年10月20日 18時

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