51・封印された感覚組織 ページ1
まだまだ寒い夜
以前共に井戸に落ちてしまった女性の安否も含めて確認に向かう
医師によれば、足の怪我以外は何にもなかった用で、ほっと胸をなで下ろした
目の前でそんなに心配しなくても大丈夫ですよ、と笑う医師に
ずっと気になっていた事を聞いてみる
陽「日暮さんは…いつからあの状態なんですか?」
少し唐突過ぎただろうか、カチリと動きを止める医師……榎木先生
診察室に静かな空気が流れだした
しかしそれは一瞬で終わることとなる
少し間を開けて息を吐く先生の空気が、一気に硬派なものへと変わった
榎「旅人のあの体は、生まれながらではありません。旅人がまだ五歳の時です。大人でも耐えられないような状況下でカンキンされ、苦痛を味わいました」
カンキン……余りにも、いつも優しそうな笑顔を浮かべる日暮さんからかけ離れているからか、全く想像がつかない
だが、ない頭をひねり自分がその状況下に置かれた所を考えてみよう
(っ……!!)
余りの恐怖感と、絶望に押し潰されそうになる
これ以上の物を彼はわずか五歳で体験したと言うのか
五歳という小さい心と体では耐えなんだだろう
(…………五歳?)
もしやと思い、先生に聞いてみる
陽「その事件とは、二十年前にのぞみ保育園で起きた事件の事でしょうか?」
すると、鋭い目つきで確かめてどうする?、と言われ怯んでしまう
それでも気になるのが人間で
陽「も、もしそうだとしたら、日暮さんと私は同じ保育園で一緒に……」
無意識に腰のキーホルダーに手を伸ばす
たぁくんとの思い出。と言っても私が羨ましくて勝手に取ってしまったものなのだけれど
榎「なんにしろ、暴くべきではない。旅人は自分から過去について語りません。自分の意思で過去を封印しているのでしょう」
哀しそうに話す榎木先生
旅人さんの目の事を信じて支えてくれた医者は、先生だけだと聞いたことがある
きっと心優しい方なのだろう。まるで家族の様に悲しんでいる事が目に見えた
榎「それも、視覚以外の五感すべてを封印する強い意志です。扉を開ければ旅人の精神が壊れるかも、知れません」
私もその家族の様に、彼を支えることは出来ないのだろうか
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作者名:友美桜 | 作成日時:2017年5月24日 21時