僕らの秘密が【Fischer's モトキ】

14･嘘は本当に【秘密】 ページ14

話し終わって、沈黙が続く
しばらくして涙もすっかりと止まった頃
ハンカチから顔を上げると、俺よりも悲しそうな顔をしたモトキが居た

その瞳は今にも涙を零しそうで、何で泣いてるのか分からなかった

『何でモトキが泣いてるの……』

そう言うと、何でもないよと俺の頭を撫でた
それが何故か心地いい
モトキに撫でられたりするのは前々から気持ち良かったが、今は心までほんわかさせてくれる

『モトキは昔から魔法使いだね』

モトキ｢何それ｣

良かった。笑ってくれた。君が悲しそうな顔をしないで。モトキは笑ってる方が良い
モトキはモトキのままで

俺は俺で。だから覚悟を決めなければならない
彼らから離れる決断をする覚悟を

『…………まぁ、今話した通り俺は皆に秘密を黙ってた。だから』

モトキ｢AはFischer'sのAだよ｣

そう俺の言葉に被せて話すモトキ。まるで俺に言葉の先を言わせない様にしたかのようだった

彼の瞳は待っすぐ前を向いていて、こちらを見ていない
先程までの涙目とは違い、キリッと凛々しい表情。彼もまた彼の中で変化があったように見えた

モトキ｢AはこれからもFischer'sメンバーだよ。Aは秘密を僕に話してくれた。だからもうそんなに気負わないで｣

『でも、それじゃシルク達に嘘をついているのと同じだよ。罪は変わらない』

手を伸ばし人差し指で俺の唇に触れるモトキの手
ふにっと軽く跳ね返った

モトキ｢A、こんな言葉知ってる？『嘘はつき通せば本当になる』って｣

『知ってるけど……』

モトキ｢だからさ、一緒に嘘を本当にしよう｣

それってどういう事、そういう前に抱きしめられる
強く抱きしめられているので、少し背中が反った。暖かい。昔から変わらない香り。落ち着く体温と匂い
なんとなく、大丈夫な気がした

『モトキを巻き込んじゃうよ』

モトキ｢もう巻き込まれてるよ｣

『大変な思いさせるかもしれない』

モトキ｢Fischer'sにいれば面倒事はしょっちゅうだから大丈夫｣

『変な気を使わせるかも』

モトキ｢それは今まで通り、過ごすつもり｣

また目頭が熱くなる。さっきまでとは違う涙
何となく懐かしい。昔、怪我して泣いてる俺を抱きしめてくれたあの頃のように、モトキの背中は大きかった

肩越しの彼の髪が首に当たってこしょばゆい

『モトキ』

モトキ｢……なぁに｣

腕に入る力が強くなった

『ありがとう』

モトキ｢どういたしまして｣

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