〜18〜 ページ21
｢なんだよ、世界を守るって。お前らしくない発言だな｣
紅炎の部屋を後にした2人は、鍛錬場の柱を背凭れにして腰を下ろしていた。
鍛錬場の芝生は相も変わらず緑に染まり、真上に浮かぶ白い雲は空の青さを一層引き立てている。その空の下では、白龍が薙刀を振り回して風を切っていた。金属器が陽の光に反射してはちかちかと目眩しを発動させる。
上を見ても下を見ても、自然の眩しさと金属器の反射で目が痛い。ずっと瞼を閉じていたいくらいだ。
｢そうでしょうか。私にとっては、当然のことだと思うのですが｣
隣に腰掛けるジュダルの質問を、冷静なままシェルは答えた。
｢私はただ純粋に、私の想う者を護りたいだけです。あの女が煌帝国に……否、この世界に来てからこの世界は次々崩壊しているのが分かる｣
｢お前が何言ってんのかよくわかんねーけど、あいつの何を知ってんだよ。お前は｣
｢あら、珍しく興味を示していらっしゃるのですね｣
｢や、別に……そういう訳じゃねぇけど……｣
微風が2人の長髪を攫う。シェルは立ち上がればジュダルと向き合い、微笑みを顔に貼り付け、
｢ふふ、みなまで言わなくていいですよ。わかってますから｣
思考を読み取れない声色で囁いた。
｢あの女は、恐らく『この世界』の“創造主”に違いありません。でなければこの世界の人たちの記憶を一斉に操ることなんてできる訳ありません｣
｢じゃあ、お前はどうしてその異変に害されてねえんだよ。金属器を大量に持ってるわけでも、マギでもねえお前が。……まさかお前、この世界の住人じゃねえとか言いだすんじゃねえだろうな｣
｢言いますよ｣
｢────｣
風も止むほどの小さな沈黙が2人を包み込む。彼女の貼り付けていた笑顔は闇を潜めた様な表情へと曇り、ジュダルは目を見開き、開いた口が塞がらない。少しの間見つめ合う中、再び風がその間を横切る。
｢私は別の世界から来ました。ジュダル様も紅炎様も知らない世界から、ね｣
驟雨の臭いが、白龍の鼻腔を擽る。
彼はそれでも尚、薙刀を振り続ける。
降り出した雨粒は、彼に両断された。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅妃(プロフ) - 睦月サイハさん» コメント有難う御座います！ここのところ更新してなくて本当に申し訳ありません。わたくしめには勿体ないお言葉を頂けて、本当に嬉しい限りです。そろそろ話が進むので、気長に待っていただければ幸いです！ (2017年10月12日 0時) (
レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
睦月サイハ - あの、更新頑張ってください！とても面白いし、続きが気になります！ゆっくりで良いので頑張ってください！応援しています！ (2017年10月11日 23時) (レス) id: 78af19d42e (このIDを非表示/違反報告)
紅妃(プロフ) - ゆみさん» 最新話の感想コメント有難う御座います！やっと今まで書きたいところを書けたので、読者様にもそう言っていただけてとても嬉しい限りです！みんなが無事でいられることを私も祈ります… (2017年7月8日 16時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - シェルの正体は何者でしょうか 続き気になります 何かたくらんでいるのはあきらか みんな気をつけて (2017年7月8日 13時) (携帯から) (レス) id: a64fcc18a2 (このIDを非表示/違反報告)
紅妃(プロフ) - ゆきさん» 感想コメ有難う御座います!そう言っていただけるなんて光栄です、頑張ります!!；；；； (2017年5月25日 8時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅妃 | 作成日時：2016年12月6日 1時
