〜17〜 ページ20
「────」
「そうすれば、そうすれば……紅覇様はあの娘のことを忘れる。いえ、この世界の人全員、あの娘の存在を記憶から自然と抹消する。私のところに、今度こそ戻ってきてくれる。私の居場所が取り戻せ……あら?」
気が付けば紅炎は意識を失っていた。完全に首が前に傾いた状態で寝息を立てている。「不法侵入者」の前だというのに。
「もう気を失ってしまわれたのですか……。存外、私もとんだ見込み違いをしていたみたいだわ。貴方様なら話が終わるまでなんとか持ち堪えられるかも、と思っていたのだけれど」
“結局忘れられてしまうのですけれどね”――そう呟く声も、聞く耳を傾ける者はその部屋にはもういる訳もなく、彼女にとって孤独をより際立させるのに十分すぎるほどで。
「……まあいいわ。ここからは私が──」
「てめぇ、こんなところで何してやがる」
部屋を出ようと踵を翻した瞬間だった。目前には、少々露出が激しい黒ずくめの青年、ジュダルが立っていた。
ジュダルは自身の銀色の杖にルフを集め、シェルのこめかみに当てている。
横目にすら映らなかった筈だ、と流石に驚愕した彼女は反射的にごくりと生唾を呑み込んだ。
「……あら、ジュダル様。ご無沙汰しております。……それは私のセリフですよ。こんなところで、それに“そんなこと”をして、どういうおつもりでしょうか」
笑顔を取り繕って居ても、矢張り驚きのあまり顔が強張っている所為で顔が歪んでしまう。ジュダルにとって、今のシェルはこちらを睨みつけている様にしか見えないだろう。
然し彼はそんな事はどうでもよかった。今の彼にとって、最重要事項は「何故こんな所にコイツが居るのか」。ただその一点呑みについてだった。
「どういうつもりもクソもねぇ。ずっと聞いてたぜ、おめーらの会話」
「なあんだ。だったら話が早いわ! ジュダル様、私と一緒に……いいえ、“私たち”と一緒に、世界を守りましょう!」
「……は?」
広い個室の中。意識のない部屋の主を余所に、正反対の青年男女の声が交わりだす。
運命の歯車が、またひとつ音を立てて動き始めた
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紅妃(プロフ) - 睦月サイハさん» コメント有難う御座います!ここのところ更新してなくて本当に申し訳ありません。わたくしめには勿体ないお言葉を頂けて、本当に嬉しい限りです。そろそろ話が進むので、気長に待っていただければ幸いです! (2017年10月12日 0時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
睦月サイハ - あの、更新頑張ってください!とても面白いし、続きが気になります!ゆっくりで良いので頑張ってください!応援しています! (2017年10月11日 23時) (レス) id: 78af19d42e (このIDを非表示/違反報告)
紅妃(プロフ) - ゆみさん» 最新話の感想コメント有難う御座います!やっと今まで書きたいところを書けたので、読者様にもそう言っていただけてとても嬉しい限りです!みんなが無事でいられることを私も祈ります… (2017年7月8日 16時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
ゆみ - シェルの正体は何者でしょうか 続き気になります 何かたくらんでいるのはあきらか みんな気をつけて (2017年7月8日 13時) (携帯から) (レス) id: a64fcc18a2 (このIDを非表示/違反報告)
紅妃(プロフ) - ゆきさん» 感想コメ有難う御座います!そう言っていただけるなんて光栄です、頑張ります!!;;;; (2017年5月25日 8時) (レス) id: d4608e4b4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅妃 | 作成日時:2016年12月6日 1時