検索窓
今日:9 hit、昨日:2 hit、合計:786 hit

10.今、無性に ページ10

「……っ!はぁっ、はぁ……!…うっ……」



家に帰るなり思い切り扉に鍵をかけ、いつもはつけないドアチェーンやドアガードまでして扉をロックする。
あとは、大きめの椅子をバリケード代わりに置いておく。



「……はぁっ、はぁっ…………」



自身から出る呼吸の荒さと、とんでもない心拍数に、どれだけ焦っていたのかが良く分かる。
こんなに全力で走ったのは高校最後の体育祭ぶりだろうか。
いやその時でさえこんなに走ったことはないかも。
毎年選抜リレーのアンカーに選ばれるくらいには足に自信があった。逆に言えば走ることしかできなかったのだが。



取り敢えずは一安心か……?
と思い安堵すれば、自分の手の震えに驚く。



……あぁ、本気で怖かった。

怖くて怖くて堪らなくなって、また泣きたくなったが、案の定涙なんてものは出ない。
朔に電話したかったが、彼女に心配かける訳にもいかず、1人で深呼吸する。



思い出したくもないあの歪な好意の音。
恐らく……ではなく確定でストーカーとかの類のやばいやつ。聞いたことない音だった。



こういうのってやはり警察に相談した方がいいのだろうか。

でも、証拠もないし、何なら相手の顔も見ていない。

私的に根拠はあるが「不快な音を聞いた」と言われて動いてくれる人はいないだろう。
そもそも信じてくれないし。

動いてくれるならば、相当なお人好しか、私と同じ「音」が聞ける人。
まぁどちらもそう都合良く現れてくれる訳は無いが。

好意の音にあんな不快感を覚えたのは初めてだ。



……たんぽぽ君の音なら嬉しいんだけどな。



そこまで考えて、なんだか無性に彼の音が聞きたくなった。

釣られて恥ずかしくなる程、純粋で甘い音。



「………今の私の音を聞かれたら、たんぽぽ君恥ずかしくて死んじゃうかも」



彼のことを考えていたら次第に収まっていた震えや呼吸、心拍数に「もしや」と思ったが、もう何も考えないで寝てしまいたい。

全力疾走により乱れた髪も、化粧もそのままにして、ベットへダイブした。



言うまでもなく、眠りに落ちるのに、そう時間はかからなかった。

11.大寝坊→←9.好意の音



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 我妻善逸
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。