検索窓
今日:20 hit、昨日:2 hit、合計:797 hit

7.彼の音に ページ7

「有難うごさいます、ご注文を繰り返します。アイスカフェラテが二つ、小エビのサラダが一つ……_」



今日も今日とてバイト三昧だ。

朔から我妻善逸君のことを聞いてから、1週間くらい経っただろうか。
結局あれからというもの、キャンパス内でもバイト先でもそれらしき人は見当たらなかった。

どうせなら会ってみたいという好奇心もあったが、会えないものはしょうがない、と割り切っていた。

今の私にできることは、営業スマイルを浮かべていつも通りの接客をすることだけだ。



チリン、とあの鈴の音が聞こえて、反射的に入り口へ向かう。



「いらっしゃいませ、何名様、で、す……か……?!」



いつもの定型文がうまく言えずに詰まる。
思わず引き攣った笑顔のまま固まってしまった。



「ひ、1人…です」



何処か気まずそうにそう言うお客様を、私は見たことがあるから。



……あぁ、また、来てくれたのか。



今は友人達の姿が無く、どうやら1人で来てくれたらしい。

あの、派手な金髪が似合う人。



「たん……っ!

………大変失礼致しました。1名様ですね。こちらの席へどうぞ」

「あ、有難う、ございます……!」



たんぽぽ君、と言いかけて流石に止める。
待て待て流石に失礼過ぎだ。
相手はこっちのことを覚えてもないだろうに。

接客の不手際を丁寧に謝罪し、いつもの笑顔で仕切り直す。



席に案内する動作と共に、またこっそりと彼の音を聞く。
どうやら私も相当馬鹿のようだ。

でも、今度こそ聞き間違えて勘違いしないように。



「………っ」



そう、思っていたのに。



やっぱり君から恋の音がするのは……気のせいではないのだろうか。



あまりにも純粋で初心な恋の音に耐えかねて、「ごゆっくりどうぞ」とだけ言ってその場から離れる。
聞いているとこちらまで恥ずかしくなる甘い音に動揺を隠せない。



「ちょっ!Aちゃん顔赤いよ?!熱でもあるんじゃない?!」

「い、いや、大丈夫です……」

「大丈夫じゃなさそうなんだけど……。取り敢えず少し早いけど休憩入ったら?今結構手は足りてるからさ!」

「………じゃあ、お言葉に甘えて。お先に休憩失礼します」



私は……ホールですれ違った店長に心配されるほど顔が赤かったのか。

そう自覚すれば、休憩に入ったのにも関わらず、顔の熱が更に熱くなったのを感じた。

8.彼女の音に→←6.面白い新入生



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 我妻善逸
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。