君の「音」を聞かせて【鬼滅の刃】 (ページ6)

今日:14 hit、昨日:2 hit、合計:791 hit

6.面白い新入生ページ6

「相変わらずのお疲れ顔だねぇ、ほれ、スタパだ。食らいつけ」

「噓でしょ、本当にキッシュも付けてくれたの！？」

今日はバイトが休みだ。
だからこそこうして朔と昼食を共にしているのだが。

約束してくれたスタパのキャラメルマキアートと、冗談で言ったキッシュまで奢ってくれた朔には流石にときめく。有難う、友よ。

「そんで話変わるけど、今日新入生に面白い子いたよ」

「うん急だね。どんな子？」

急な話の切り替えに即座に対応して、ホワイトモカを飲む朔の話に耳を傾ける。
朔は色んなサークルに面識があり顔が広い為、そういう情報が入りやすいのだろう。
私は一応音楽系のサークルに入っているが、全く顔を出していない。

「派手な金髪の１回生が片っ端から美人に声かけまくって、友人に止められてた」

「なにそれ迷惑」

「面白いから話しかけてみたら、めっちゃ綺麗だって言ってくれたわ」

「でしょうね」

朔の話を聞く限り、その人はとんでもない浮気性なのだと悟った。
だって片っ端から美人さんに声をかけるのだから。

会ったことないが、単純に近づきたくないと思った。
これは八つ当たりだが、すごく元カレを彷彿とさせるから。

「あー、そういえば彼、Aと同じ絶対音感持ちだって言ってたよ」

「へぇ……耳が良いのかな」

「さぁ？感情まで聞き取るA程ではないんじゃない？」

「まぁ感情の音が分かる人なんて、早々いないか……」

前言撤回、とまではいかないが、先程の「近づきたくない」発言は訂正しよう。
彼の絶対音感持ちという共通点に僅かな興味が湧く。

因みに私の耳が良いことを知っているのは朔だけだ。
基本的に「感情も聞き取る」なんてことはまず信じてもらえないからだ。
いやはや、こんなことまで信じてくれる朔は何て良い友人なんだろうか。

「派手な金髪の１回生…か。一応聞くけど、名前は？」

「我妻善逸、だってさ」

我妻、善逸。
しっかり聞き取ったその名前を記憶する。
珍しい苗字だな、とちょっと思った。

「見たら分かるかな？」

「絶対分かる。あの髪は派手」

「そんなにか」

ふふ、と笑って、次の講義が始まるまで雑談を続けた。
「昨日のバイトでも派手な金髪がいたよ」とは、流石に言えなかった。

我妻善逸。

何故だかこの名前が妙に心に残った。