5.たんぽぽ ページ5
「お疲れ様でした。お先に失礼します」
「お疲れ様でした!A先輩がいてくれて本当に助かりました!いなかったら店回せなかったですー!!」
「ふふ、有難う。じゃ、またね」
バイトの後輩に別れを告げ、店を出る。
結局、本来上がる予定だった時間から1時間追加でヘルプにあたっていたので今日も5時間勤務だ。平日なのに。
時刻は17時過ぎか。
今日の夜ご飯どうしよう。適当にコンビニで買うか。
そんなことを考えながら、日が落ちかかった道を歩く。
いつもと変わりない道だが、今日は少しだけ違った。
「………たんぽぽか、春だな……」
ふと、道端に咲くたんぽぽに視線がいく。
普段なら目も向けないだろうに、今日はやけに気になった。
なぜ急に気になったのかを考えれば、理由は明白だった。
あの派手な黄色を今日も見たから。
__「っ?!」
顔を赤くしてこちらを見る、名前も知らない青年が脳裏に浮かぶ。
あの青年何だったのかな。
もし本当にうちの大学の学生ならキャンパスで見かけるかもしれないと思い、心のメモ帳に彼の顔を書き残す。
たんぽぽ君、と仮の呼び名も添えて。
「……何やってんだか」
そこまで考えて、ポツリと誰もいない道で一人呟く。
全く、私としたことが久しぶりに聞いた自分への好意の音に惑わされ過ぎだ。
そもそも勘違いの可能性の方が高いのに。
多分あれだ、朔との会話で変に意識してしまっているだけだろう。
そう結論を出し、考えるのを止めた。
さて、夜ご飯を買いに行かなくては。
何も考えないようにする為、私は有名コンビニチェーン店、エイトトゥエルブに足を運んだ。
「あは、は……A、僕は……」
私を見る、歪な好意の音に気付かずに。
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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時