22.君の音を聞かせて ページ22
君のことが好きだよ、と言おうとしたのに遮られる。
頭に疑問符が浮かんだが、そんなものは善逸くんの顔を見れば一瞬で消え去った。
「それは、俺から言わせてほしい」
その表情に息を吞む。
見惚れるとかそういう言葉では言い足りない。
「A、俺は……
__壊れるくらい、君が好きだ」
「………っ」
「絶対に守るから、もう君を危ない目には合わせないから、君以外いらないから、
__俺と付き合って下さい」
想像していたよりもずっと重いそれは、かつての元カレの言葉とは比べ物にならない程信頼できた。
何故なら、彼の「音」がそう言っているから。
そこまで想ってもらえていることが嬉しくて、つい気持ちが高ぶる。
「私も……善逸くん、
__手放せないくらい、君が好きだよ。
絶対に、捨てないでね。きっと想像以上に……重いけど」
「………うっ」
自分で言っていて色々な意味で火傷しそうになる。
顔が信じられない程熱を帯びている。
善逸くんが軽く呻き声をあげているが、もしかして色んな意味で痛かったか…?
「あのさ、A……」
「………」
困ったような顔の善逸くんを見て、
痛かった?いやそれは申し訳ない……。
私としたことが大人なのに気分を高揚させてしまいました。
と、脳内で謝罪文を組み立てる。
が、どうやら不要だったらしい。
「……今の顔めちゃくちゃ可愛かったから、俺の家来てくれない……?」
「そんな顔して言われても、前後の文が全く繋がってないけど……?」
そう呟いた私の言葉は無視されて、強制的にお持ち帰りされたのは言うまでもない。
朔から来た問い詰め連絡に返信できたのは、ようやくスマホが充電された翌日だった。
「ごめん、大丈夫……?」
「大学は元から休みだけど………バイトは……無理だね」
土下座通り越して土下寝してる善逸くんと、ベットから動けなくなっている私。
何でもお申し付けください…なんて唸ってる善逸くんの派手な金髪に触れる。
「……じゃあ1つお願い事」
「はい!何なりと!!」
「……君の「音」を聞かせて?」
「…〜〜っ絶対今ヤバい音だけどいい?」
「いいよ。君の音なら、全部好き」
「無理、反則過ぎ……なにその音」
これは、少し変わった耳を持つ、2人の話。
_君の「音」を聞かせて
fin
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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時