18.夢 ページ18
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気づけば、悲しい音の鳴る場所にいた。
__「………………」
一定間隔で鳴らされ続ける木を叩く音。
周りにいる人たちの、すすり泣く声。
大人子供関係なく、みんな悲しい音がしてる。
一度見た光景に、あぁこれは夢だ、と悟る。
__「……き....、....」
これは両親の葬儀の夢だ。
あの時、もちろん私も悲しかった。
泣きたくて、寂しくて、堪らなかった。
でも、分からないけど、
周りの人と同じように、
私は涙を流すことが出来なくて。
そんな自分にまた悲しくなった。
__「………き、て」
誰かに、
可哀想に……幼い娘さん1人が残されて……。
そう小声で呟かれて、
私って可哀そうなのか、と思った。
__「……おき、て……」
でも、
その人は私に聞こえないようにしてたから、
私もそこで聞こえないふりを覚えた。
まぁ、そこまで器用じゃないから、
高校の頃にはもう止めた。
__「………おねがい、おきて………」
.
だから今も聞こえてる。
彼が私を呼ぶ声が。
寝ていても周りの会話が聞こえる、なんて、
信じてくれないだろうけど。
だけど、お願い。
もう一度だけ、
君の「音」を聞かせて。
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__「……Aっ!!」
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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時