17.なんで貴方が ページ17
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「その人に……何してんの……？」
「テメェは……！！Aの浮気相手……！！」
もう私は目を閉じて、全て諦めてしまおうと思った。
なのに、どうして、
「……っ！」
貴方がここにいるの？
あの時、無性に聞きたいと願った彼の音がする。
今にも声に出して叫びたい。
お願い、助けて、と。
なのに私の体はうまく動いてくれなくて何も声が出なかった。
でもどうやら気持ちだけ伝わったのか、彼からは聞いたことのない程の怒りの音が鳴っていた。
あぁ、私の為に怒ってくれている。
それだけで嬉しいのか悲しいのか分からない、名前の付けられない感情に襲われた。
「Aさん……に、お前が、傷、を………」
何故か震える彼の声を遠くなっていく意識の中、確かに聞いた。
「っ？！Aさん……っ！！」
物凄く遠いところでパトカーのサイレンが聞こえてきた時には、もう意識を手放してしまった。
最後に見た彼の姿が、夢じゃないことを祈って。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
善逸side
何となく嫌な予感がした。
いや、別に根拠はないけど、そういう気配？を感じた。
俺は４限には帰っていたけど、大学にすごく大事な忘れ物があったから戻ってきたんだ。
もう忘れ物の回収し終えたときには２１時、真っ暗だった。
「………っ」
大学を出た時、嫌な予感がグッと強くなって、俺は、行くべき駅とは正反対の道を進んだ。
これで何もなければただの杞憂で終わって、めでたしめでたしだ。それで良い。
だから何事もあってくれるなよ、と願う。
しかし、俺の耳は確実に捉えた。
鈍い、殴ったような音を。
足に自信があったから走って音があった場所へ向かった。
普段の俺なら、怖くて動けなかっただろうけど、それ以上に強く俺の頭の中は警報を鳴らしていた。
だから信じたくなかった。
「……っ」
「………は？」
何で、Aさん、
貴女がそこにいるんですか、と。
.
それからのことは正直良く覚えていない。
通報して、彼女を傷つけた男に近づいて……。
俺、多分もう人生でこれ以上怒ることない気がする。
この怒りは、確か、その男へのものと、彼女を守れなかった自分へのものだったと思う。
意識を失った彼女を見て、何かが切れた。
それは怒りじゃなくて、もっと醜いもの。
到底彼女には見せられないような………何か。
うわ、俺ってこんなに……
そこまで考えて、止めた。
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作者名：tokumei | 作成日時：2023年8月21日 13時
