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14.甘い匂い ページ14

炭治郎side



今日は3限からの講義だったからと3人でキャンパス内を歩いていた。
善逸はあのカフェに行って以来、少し気持ち悪いことも多いが、それだけあの店員さんに惹かれたのだろう。
確かにあの時の店員さんからは、すごく心地良い優しい匂いがした。



「んん?おい宗治郎!あの女から嫌な感じがするぞ!」

「女じゃなくて女性と言った方がいいぞ、伊之助。

……でも、確かに。分かりにくいけど、不安とか恐怖を感じてる匂いだ。何か困っているのかもしれない!」

「うわホントだ!うまく音が隠されてて気付かなかった!女性が困ってるのに助けない訳ないよなぁ!炭治郎ー!」

「あぁ、ちょっと声を掛けてみよう!」



てくてくと歩いていれば突然伊之助がそんなことを言うから驚いた。
良く鼻を利かせれば、僅かにその匂いがした。

もちろんすぐにその女性へ声を掛けようと、近づいて、手を伸ばした。



「………!」

「………っA、さん……?!」

「っ?!」



でもその手が届く前に女性が振り向いたから、どうも手の行き場がなくなってしまった。
しかも善逸の言う通り、この女性は前にカフェで接客をしてくれた人だった。

むしろなんで今まで気付かなかったんだ、と自分に驚く。
そしてそれは2人も同じだったらしい。






.






さて、いざ彼女と話してみれば、Aさん…いやAさんはとても優しい人で。
きっと自分の事よりも人の為に尽くすタイプだと思った。

Aさんと話す度、隣にいる善逸からとんでもなく甘い匂いがするもんだから、なんだかこっちまで照れてしまいそうだった。



でも、善逸にばかり気を取られていたが、Aさんからも善逸と似た匂いがしていた。
顔は変わらず笑顔だが、匂いでバレバレである。



あぁ、この2人は想い合っているのか、と理解した。

俺は良く鈍いと言われるが、流石にここまで分かりやすければ嫌でも気づく。



これは友人として応援しなければ!と思う反面、何故かチクリと胸が痛んだ。

一体それが何なのかは分からないが、今はその痛みに目を瞑っておくことにする。



そうこうしているとこの前の新入生歓迎で知り合った五十嵐朔さんが現れて、Aさんを連れていく。
最後にちょっとした冗談を言って去っていく彼女に、また店へ行くと約束し、見送った。



隣から未だに匂う甘い匂いに、俺は少しだけ眉を下げた。

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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時

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