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13.優しい彼ら ページ13

たんぽぽ君の自己紹介聞いて固まる私。

炭治郎くんも伊之助くんも頭に「?」を浮かべている。
まずい、あからさまに動揺してしまった。

ふぅ、ここはバイトで培った対応力を見せるときだ。



「……ごめんなさい、何処かでその名前を聞いたことがある気がして。

炭治郎くんと伊之助くんと善逸くんだったよね。
違ってたら申し訳ないけど、近くにあるカフェに行ったことあるかな?」

「え……!あ、あります…!」



これこそ営業モードの完璧な笑顔。そしてお客様(?)に失礼にならない態度で話題の転換を図る作戦である。

私が遠慮気味に尋ねれば、たんぽぽ君改め善逸くんが嬉しそうな音を立ててそう答えてくれる。
まぁ「違ってたら」などと言ってはいるが、この3人が来店していることを確信した上での発言なので当然だが……。



……うわ、可愛い。



不覚にもその嬉しそうな彼にきゅんとしてしまった。

もちろん営業モードの意地で、顔には出ていないけど。



「あぁ!Aさんはそこの店員さんでしたよね!」

「お、よく覚えてるね、炭治郎くん。……あぁ後、名前で呼んでも大丈夫だよ?」

「え?!はい!分かりました!」



ひょんなことから始まり、何気なく続けられた会話をしているうちに、段々とこのキャンパスに来るまでに感じていた不安が拭われていった。

彼らはもしかして神の使いか?

と、馬鹿なことが一瞬本気で頭をよぎった。



「A!!居た!凄い探したっ……って、あ?!この前の新入生!!」

「あ、朔。ごめん、連絡してなかった」

「お?別に良いよ。ちゃんと来たし」



ワイワイと会話をしていると、朔が現れる。
大分探させてしまったようで、ちょっと申し訳ない。



「次の講義もうすぐ?」

「ん、そーだよ」

「じゃあ、善逸くん達とはここでお別れだね。お話ししてくれて有難う。

またのご来店をお待ちしております……なんてね。またね、3人共!」

「はい!是非また行きます!講義頑張って下さい!」



「ありがとー」と軽く手を振って、3人とお別れする。
全く、最初から最後まで本当にいい子達だ。

ふふ、と笑みを零せば、朔がにやにやとこちらを見てきていた。



「な、何?」

「いや?ちゃっかり良い顧客ゲットしたなぁって思って」

「顧客て……」



でも、これでまた彼らに会う口実ができたことには変わりない。
我ながら素晴らしい接客魂だ、とちょっと褒めた。



この時、もうあの黒い影の存在のことは忘れていた。

14.甘い匂い→←12.彼の名前が



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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時

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