12.彼の名前が ページ12
「………着いた……」
大学までの道のりがここまでしんどかったのは初めてだ。
ストーカー居ないかな、大丈夫かな、と冷静な顔はしていたが内心ヒヤヒヤだった。
キャンパス内にいれば、少なくとも知り合いや警備員さんがいる。
通学路よりはまだ安心できるというもの。
まぁストーカーの人がここの人間ならば今も危険なのだが。
自分でも分かるくらいには気が滅入っているらしい。
あぁ、誰でも良いから知ってる人の音聞こえないかな。
「…………
…………!」
どうやら神様は願いを叶えてくれたらしい。
聞いたことのある音に思わず振り向く。
するとそこには、
「………っA、さん……?!」
「っ?!」
私のバイト先に来店してくれたことのある3人組。
たんぽぽ君達がいた。
「えっと……?」
やっぱりうちの新入生だったのか、と思ったが、何を言えばいいのか分からなくなってしまう。
しかし、彼らはちょうど私に声を掛けるつもりだったのか、特徴的なピアスの美青年がこちらに行き場の無くした手を伸ばしていた。
「す、すみません!なんだか凄く困っているように見えて!」
「え、私が?ごめんなさい、顔に出してたつもりは…………あ」
勢い良く頭を下げる彼に何故か唐突に本心を読まれ、思わず口が滑る。
あぁ私の馬鹿。顔に出してた、なんて言ったら「はい、実はとても困ってます」と言っているようなものだ。
「やっぱり!あの、俺達で良ければ何か力になります!」
「えぇ?!急にお人好し過ぎない?!」
まさかの申し出に流石に驚きを隠せない。
勿論助けてもらいたいが、私もそこまで馬鹿女ではない。
迷惑かけるのもよくないし、感謝を述べて丁重にその申し出をお断りする。
「心配してくれてありがとう。でも私は大丈夫。
……あぁそうだ、名前を聞いていいかな?
金髪の君は名前を知ってくれてるみたいだけど……因みに私は3回生のAA」
「あ!すみません名乗らずに!俺は1回生、竈門炭治郎です!」
「俺様は嘴平伊之助だ!」
「っ!!……お、俺は、1回生の……」
炭治郎くんと伊之助くんが名乗ってくれて、遂に彼の番。
たんぽぽ君、ようやく名前を知れるな、とちょっと嬉しく思った。
「我妻善逸、です」
「……うん?」
まさかここで「派手な金髪の絶対音感持ち浮気性新入生」の名前が出てくるとは思わなかったけど。
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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時