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2.彼氏なんて ページ2

「はぁ……」

「何?どうした?振られた?」

「違う。彼氏は1年前に別れたでしょ」



3月には満開だった桜にも緑が混じって来た頃。

午前中の講義を終え、分かりやすくため息をついた私に、高校からの友人である五十嵐(いがらし) (さく)が声を掛けてきた。



「バイトの疲れかな。これからバイトだけど」

「あー、理解。お疲れさん。今度スタパ奢ってあげる」

「有難う。キッシュも付けて」

「調子に乗るでない」



朔は女性だが、女の私でも時々ときめくくらいのイケメンで、高校の頃は女子校だったのにも関わらず、告白をされまくり玉砕させてきたような人物だ。
宝塚タイプと言ったところか。

そんな彼女といつものような会話をしながらも、講義終わりの凝った肩を回して身の回りを片付ける。



「マジな話、彼氏作ればちょっとは生活変わるんじゃないか?」

「……無理」

「前に別れたクソ彼氏思い出したか……」



疲れている私を見てか、急に話題の転換を図ってきたが、残念ながらそれは地雷だ。
1年前、散々な別れ方をした元カレのことを思い出す。

彼が告白してきて、デートもして、恋人らしいことだってした。
まぁ最後まではしなかったが。

私もそれなりに好きだったのに、あろうことか浮気され、浮気され、浮気され……。
よくそんな浮気性男と2年も付き合っていたものだと自分に驚く。

あの男からは何度も浮気をしている「音」がしていたのに、だ。

「もう絶対浮気しない!」「別れないでほしい」「Aが一番だから!」……その言葉も4回目で聞き飽きて、もう彼氏なんて作らないと心に誓ったのだ。

やれやれ、自分の男運の悪さには呆れる。
彼氏は無理だ、と2人して苦笑する。



「まぁせいぜい無茶して倒れないようにね」

「肝に銘じる」



色々言われたが、スタパを奢ってくれたり、体の心配をしてくれる辺り、本当にイケメンだ。
心から思ってくれている言葉であることは彼女の「音」が物語っていた。

高校1年生で出会ってから何故か気が合い、それから大学3回生になってからもずっと共に行動してきたが、やっぱりイケメンだと思う。



出来る事ならこういう気遣いのできる人と付き合いたい。

……いや、無理か。



とぼとぼとバイト先に向かう私を「頑張れよー」と見送ってくれる彼女に手を振って、大学を出た。

3.耳を疑う→←1.今月のバイト



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作者名:tokumei | 作成日時:2023年8月21日 13時

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