君の「音」を聞かせて【鬼滅の刃】 (ページ1)

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1.今月のバイトページ1

「お待たせ致しました、こちら、アイスコーヒーと、季節限定大粒いちごパフェです」

そう言って、男女２人のテーブルに定番のコーヒーと、現在当店大人気メニューである華やかなパフェをそっと置く。

そうすれば、さも当然のように女の方はそのカロリー爆弾のようなものを見て撮影会を始め、男の方は澄まし顔で自身のカップに口を付ける。

あぁ、またか。

心の中でため息をつく。
最近のお客さんはこういう人が多いな。
どうせ写真目当てでろくに食べず帰るのだろう。

ここのカフェでバイトを始めて３年。

私が働きだした頃はまだここも有名ではなく、落ち着いた雰囲気で、来る客層は休憩中の社会人や静かな紳士淑女ぐらいで、私もその雰囲気が好きだったのに。

今では「ＳＮＳ映え確定？！都内のオアシス！お洒落カフェを紹介！」……なんて宣伝文句で様々なメディアに取り上げられて、今を生きる若者たちが集うような有名店だ。

最近では写真だけ撮って殆ど食べない人や、大きな声で騒ぐ学生が多い。

私は人よりも耳が良いからか、どうもあの甲高い声が苦手だった。

なら辞めてしまえと思われるかもしれないが、ここの店長には随分親しくさせてもらっていて、今ではバイトリーダーまで任されている為、これが中々辞めずらい。

自身の責任感の強さには自覚があったが、頼まれると断れないこの性格も直した方がよさそうだ。

「Aちゃん、今いい？」

「はい、すぐに行きます」

店員を探しているお客様がいないかと、ホールを一通り回っていると店長から声を掛けられる。
ホールを他のバイトに任せ、もちろんすぐにスタッフルームへ向かう。

スタッフルームでは店長が座っていて、手には今月のシフト表を持っている。
確か私の希望は、平日３時間と休日５時間で週４勤務だったはずだ。

「申し訳ないんだけど、平日もう１時間だけシフト入れる？」

「はい、分かりました」

「ごめんね、大学生なのにこんな働いてもらって……。最近はお客さん多くてね……」

その希望に即諾すれば、本当に申し訳ないといった様子で謝る店長。

「それにもう４月でしょ？新しく大学生になった人の来店が増えると思うの」

「あぁ……確かにそうですね」

続けて紡がれた店長の言葉に深く納得する。
ここのカフェは近くに大学があり、そこの学生の来店が多いのだ。付け加えれば私もそこの３回生になる。

こうして今月の私は、いつもよりも多くシフトを入れたのだった。