或るアイディア ページ7
目が覚めるとまた、全く知らない場所にいた。でも今回はあの寒い倉庫じゃないし私を売り飛ばそうとするわけではない。たぶん。
ずいぶんと広いところのようだ。ドアの向こうから声がする。続いて、足音。
「おや、起きてたのかい?呼んでくれればよかったのに。」先ほどのモリがニコニコしながら近づいてきた。後ろには帽子の男と、包帯をところどころに巻いた知らない男がいた。
「この子ですか?橘の娘というのは。」
その声を聴いたとたんに脳裏にあの光景がよみがえってきた。滴り落ちる血液、もう何処も見ていない二つの眼。 胃の奥から何かがせりあがってくるような感じがして、口を押えた。
「大丈夫か?」帽子の男が心配そうにこちらを見る。私はうなずき目の前の男に視線を合わせた。
「君には謝らねばならないね。」なんとなく次の言葉はわかっていた。
「私が君の御父上を殺すよう指図したんだ。」やっぱり。しかし、不思議と怒りは沸いてこなかった。そのかわり、何故?という言葉が口をついて出た。
「彼は知らなかったんだろうね。事業拡大のために借りた金がマフィアから横領されたものだと。しかし、知らなかったからと言って見逃すわけにはいかない。だからといってその金はマフィアのものだ、返せ、と言っても返そうとはしなかっただろう。むしろ軍警に密告するだろうね。君の御父上は、そういう人だ。」
そうだ。父はいつも正義感が強くて、自分の身の危険など顧みない人だった。私はそんな父が大好きで―――――
いや、まて。 さっきからこの男は父のことしか話していない。
「お母さんは?!お母さんまで殺す必要はなかったでしょ!?なんで?!」
「そう、それなのだよ。まさか、金品まで奪おうとしているとは思わなかった。誤算だったよ。きっと、騒がれるとうるさいから殺したのだろうけれども。まあ、彼らにはどちらにしろ処刑が待っていただろうね。いくら雇われたとはいえ命令違反は罰する。それがマフィアだ。」
そんなことはどうでもよかった。
私の胸には、もう私を抱きしめてくれる優しかった両親はいないこと、自分が殺人犯になったことの虚無感でいっぱいだった。
ふと、あることを思い付いた。こんなことを思い付くなんて本当に自分は人間なのか、と苦笑しながら男に話しかける。
「あの。一つ、お願いというか、交換条件というか、なんというか…とりあえず一つ思いついたんですが」
続きます→
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フリスク(プロフ) - 島空太さん» コメありがとうございます! ごめんなさい、一回リクエスト案を消してしまいました…でもそのうち書きます!(*・ω・)*_ _)ペコリ (2017年4月8日 9時) (レス) id: 53bb568289 (このIDを非表示/違反報告)
島空太(プロフ) - プリン食べられて…っていうやつが気になりますねェ…(。-∀-) (2017年4月8日 4時) (レス) id: ad1d4b6253 (このIDを非表示/違反報告)
フリスク(プロフ) - 藤猫さん» コメありがとうございます! 毎回どんな風に書こうか悩みながらポチポチやってるのでそう言って褒めて頂けると凄く嬉しいです! これからも頑張って書いてきますね( ´ω` )/ (2017年3月20日 8時) (レス) id: 53bb568289 (このIDを非表示/違反報告)
藤猫(プロフ) - 文章に台本書きや顔文字を使わずに書かれた、小説らしい小説だと思いました。謎解きも面白くて、構成も整っていると思いました。とても好感の持てる作品で、これからも読み続けたいです。楽しみにしています!偉そうな感想、長文失礼しました。更新頑張ってください! (2017年3月20日 2時) (レス) id: 59331f3ebf (このIDを非表示/違反報告)
フリスク(プロフ) - 物部さん» コメありがとうございます! 小説書くのは初めてだったので文章が綺麗と言っていただき嬉しいです!あんまり文ストキャラと絡ませられませんでしたが…w 頑張って更新しますね! (2017年3月19日 10時) (レス) id: 53bb568289 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フリスク | 作成日時:2017年2月7日 19時