人形と犬【男主】 (ページ6)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:6,077 hit

⑥ ページ6

何口も食べていると、次第に空腹感が無くなり、その分お腹が満たされていく。食べているばかりだったので、喉が渇いてしまった。すると、まだ何も言っていないのに、水の入ったコップを口にあてられていた。ンクッ、ンクッ、と喉を鳴らしながら飲む。水だけは美味しいんだよね、と僕は内心ため息をついてしまった。

食事が終わると、キレイな布で口を拭われる。少し嫌そうに、目を細めた。母様は嬉しそうに微笑んで、僕を数分間見つめた。その目は、息子に対するものとは全く違っていた。

｢すぐに歯を磨いて来なさい｣

冷たさを感じる声で、母様は言った。

｢はい…｣

僕は、ゆっくりと立ち上がり、背伸びをしながら部屋を出た。食べた後は、少しだけ休みたいんだけどなぁ、と思いながら洗面所に向かう。それは、僕の部屋から見て右側の一番奥にあった。

蛇口を捻ると冷たい水が出てくる。僕は、布で覆われた鏡を見つめながら、シャカシャカ、と歯を磨いた。

しっかりと歯を磨き、トイレを済ませると、すぐに洗面所を出た。

自分の部屋に戻ると、ちょうど母様が部屋を出るところだった。

｢サジタリアスが貴方と遊びたいと言っていたわ。遊んであげなさい。｣

冷たい声ですれ違いざまに言われた。僕は、休みたいんだけどなぁ、と残念に思った。弟と遊ぶのは好きだ。だか、今は気分が悪いので一人になりたかったが、母様にそう言われると断ることが出来ない。

母様が出ていった後、僕は弟が居る一階に向かった。