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皆の食事が終わり、それぞれ自室に戻ったり、何かをしたりし始めたが、僕の憂鬱はいつまでも晴れなかった。僕や弟、父様が描いた絵画が飾られた階段を上がっていく。陽の光が母子像の描かれたステンドグラスを通り、色とりどりに美しく階段を、僕を、照らしている。僕は、上り終わる前に、優しく微笑んでいる母子像を睨みつけた。
足取りは重かった。先程のような事が毎日、しかも三回も起こる。いつも通り、気分が悪くなって、部屋のドアノブをまわし、中に入った。照明スイッチを押し、電気をつける。僕の部屋は全体的に薄暗く、必要最低限の物しか置いていなかった。あるのは、モノトーンカラーの天蓋付きベッド、壁に沿って置かれたL字型の黒い金属柱のシンプルな机(デスク)、そして、そのすぐ横にある焦げ茶の、背の高いクローゼットくらいだ。勿論僕の趣味では無い。僕は机の上の、綺麗に立て掛けられていた本を一冊取り、ベットに腰掛けた。ベットの、キラキラとした星柄の紺色のレースカーテンを左右に開き、黒のタッセルで留めた。
本を読んでいると、ドアをノックする音と、母様の声がした。急いでドアを開ける、母様が食事を運んで来てくれていた。食事を机に置くと、三つの皿のうちの一つを持って、僕をベッドに座らせて、口にスプーンを運んだ。いつもしている事だが、いつまで続くのだろうか、と思いながら、栄養だけを重視したものを食べさせられる。僕は自分でスプーンを持って食事をした事が無かった。病院に入院した事は無かったが、病院ではこういうものを食べるのだろうか、と美味しくないそれを咀嚼しながら考えた。
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作者名：標(しるべ) | 作成日時：2019年5月12日 18時
