人形と犬【男主】 (ページ1)

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僕の一日は屋敷下僕の大きな声で始まる。重い瞼をあけると視界一面屋敷下僕の顔だった。思わず、ひぃっ、と小さな悲鳴をあげてしまう。目の前で嬉しそうに微笑んでいるのは、くすんだ薄茶色の肌に、やや大きい瞳、尖った鼻や耳の、比較的若い屋敷下僕─────ルーカスだった。相変わらずの小汚い枕カバーのようなものを着ている。僕は少し可哀想だと思った。何年も前に、それを本人に言うと、何故か泣かれてしまい、頭を暖炉のレンガに打ち付け始めた。僕が押さえつけるように止め、『誰か来ちゃうよっ』、と慌てて慰めたのを今でも覚えている。

｢おはようございます。坊っちゃま。下で奥様がお待ちでいらっしゃいます。急いでお着替えなさりましょう。｣

ルーカスの少し高い声。僕は両腕を上げ、パジャマを脱がせてもらう。黒いカーテンで遮られていた小窓がいつの間にか開いていた。窓のすぐ下の広いお庭には、たくさんの綺麗なお花が咲いている。僕がルーカスに手伝ってもらい育てているお花だ。

少し眩しい朝日と、お花の香りをのせた涼しい風が、僕の心を癒す。一日の中でも好きな時間だ。最も心安らぐ時間は弟や親戚の子達と遊ぶときだ。今日は何して遊ぼうか、と考えていると、着替えがもう少しで終わるところだった。もう着替えなんて自分で出来るのに、何故かいつもルーカスや母様がしてくれる。

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