悶々 ページ9
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「Aさん!羽織の破れ直しててくれたんですね!ありがとうございます!」
「今日も女神級に素敵です!」
「て…天ぷらまた作ってくれよな」
鍛練を終えたあと、庭へ出ると賑やかな声がする。
遠目に目線をやれば、炭治郎ら三人組がAの周りをわらわらと囲んでいた。
遠巻きにその様子を見ていると「どういたしまして」とにこにこ微笑みながら一人ずつ丁寧に相手しているAとぱちんと目線が合い、Aは慌てて顔を背け、俺もつられて背を向けてしまった。
「Aさん?どうかしたんですか?」
「う、ううん。なんでもないの」
「それじゃあ、鍛練頑張ってね」とAが炭治郎達と別れるのを聞いた俺は「……はぁ」と小さくため息をついてその場に座り込んだ。
最近、Aの様子がおかしい。
この間までは見かけると必ず手を振ってくれたのに、今では俺と鉢合わせても挨拶も無しに顔を真っ赤にして逃げていく。
(……嫌われたのだろうか)
胡蝶の言う通りなのは悔しいが、あの態度を見るとそうなのかもしれない。
元々人から好かれるのは得意ではないと分かっている。
愛想がいい方ではないし、人と話すのも好きではない。
そんなだから嫌われるのだ、と胡蝶にまで言われる始末の俺に、Aは初めて会った日から楽しげに話してくれた。
『初めまして。今日からお世話になります、綾瀬Aです』
『……冨岡義勇だ』
『冨岡さん…冨岡さん、覚えました!これから宜しくお願いしますね』
『……ん』
丁寧にお辞儀をし、少し背の高い俺をにこにこと見上げながら話すAの雰囲気に、俺の心は柔らかく絆されていったのを覚えている。
(……Aは、何で俺を気にかけてくれるのだろうか)
考えてみても分からないことに悶々としていると、「冨岡さん」と呼ぶ声にぱっと振り向いた。
「……」
「そんなあからさまに嫌な顔します?」
そこに立っていたのは胡蝶で、女の声からAだと思った俺の期待は見事に裏切られた。
「あ、もしかしてAちゃんだと思いました?」
「……うるさい」
「図星、って事ですね」
「すみませんねえ、愛しのAちゃんじゃなくて」と俺をからかいながら隣に座る胡蝶は「あれからどうですか」と聞いてきた。
「Aちゃんとお話しました?」
「……避けられている」
「自業自得ですね」
ぐさぐさと毒を放つ胡蝶を睨むと「…いい案があるのですが、お教えしましょうか?」笑いかけてきた。
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やも - Regulusさん» コメントありがとうございます!更新お待たせしました。楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: d5279b18f1 (このIDを非表示/違反報告)
やも - まゆさん» 初のコメント嬉しいです。ありがとうございます!喜んでいただけるよう頑張ります。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: d5279b18f1 (このIDを非表示/違反報告)
Regulus(プロフ) - 続き楽しみに待ってます!更新頑張ってください(*≧∀≦*) (2020年5月3日 23時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 好きです。応援しています。 (2020年4月30日 15時) (レス) id: 333fde5e7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やも | 作成日時:2020年4月23日 10時