好意 ページ11
.
夕刻が近づく茜色の空の下
俺と胡蝶は団子を頬張りながら横並びに歩いていた。
「素敵な物が買えてよかったですね。冨岡さん」
「素敵かどうかは綾瀬の受け取り方次第だろう」
「私に選ぶの手伝わせておいてそんな言い方あります?」
「……良い物が買えたとは思っている」
淡い桜色に、これまた桜の花弁が施された櫛。
確かAは桜の花が好きだと話していたと思う。
簪や手鏡なども並べられていたが、これがAの雰囲気に一番合っているような気がして俺はそれを迷わず手に取っていた。
(……これで、またAと以前の様に話せるといいのだが)
Aのように可憐で柔らかい色合いの櫛。
櫛の入った小箱をすっと撫で、思いに更けていると隣で見ていた胡蝶がくすっと笑いだした。
「…まさかあの中から櫛を選ぶなんて」
「何か言ったか」
「いえ、知らないならいいんです」
そう言いながらくくく、と笑う胡蝶はやはり変で。
まぁいつもの事だと無視して歩いていると「冨岡さんって」と話しかけられた。
「Aちゃんのどこがお好きなんですか」
「……別に好いてはいない」
「でも好意は寄せていると」
「…」
「そんな思春期の様な態度ばればれですよ」とあははと笑う胡蝶に益々嫌気がさし歩く速度を少し早めるけれど、そんなのは胡蝶に関係なくすぐに距離を詰められた。
「珍しいですね、冨岡さんが異性に好意を抱くなんて」
「…そんな特別なものではない」
「あら、そうなのですか?」
「ただ…」
「ただ?」
「…Aと会えて嫌な気はしない。むしろAといる時間が心地よいとさえ感じている」
「…」
「Aが嫌なこと、困ったことがあれば助けてあげたいと思う」
「……余程大事に思ってるんですね。Aちゃんのこと」
「…大事だという点は間違っていない」
「だそうですよ、Aちゃん」
耳を疑うような胡蝶の言葉に驚いて顔をあげると、いつの間にかもう屋敷に到着していて。
出迎えで出てきたらしい目の前のAが顔を真っ赤にして俺の顔を見つめていた。
「あ、あの…」
「……」
「Aちゃん聞きました?冨岡さん、Aちゃんのこと大切に思っているそうですよ」
「こ…胡蝶さ…!」
「胡蝶!」
恥ずかしさからかお喋りな胡蝶を制す為に出た呼び声が見事にAと被ってしまい、「あらあら似た者同士ですねぇ」と胡蝶は笑いながら自分の屋敷へと戻っていった。
.
71人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やも - Regulusさん» コメントありがとうございます!更新お待たせしました。楽しんでもらえるよう頑張ります。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: d5279b18f1 (このIDを非表示/違反報告)
やも - まゆさん» 初のコメント嬉しいです。ありがとうございます!喜んでいただけるよう頑張ります。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: d5279b18f1 (このIDを非表示/違反報告)
Regulus(プロフ) - 続き楽しみに待ってます!更新頑張ってください(*≧∀≦*) (2020年5月3日 23時) (レス) id: 9c91fd3a1d (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 好きです。応援しています。 (2020年4月30日 15時) (レス) id: 333fde5e7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やも | 作成日時:2020年4月23日 10時