Encount ページ9
美しい美術品の数々。そのなかでも私は、一番奥の広間に飾られた巨大な絵に釘付けになった。口では説明できない、でも心の奥底に入り込むような絵。息をするのも忘れてその絵を見つめた。
「…目が離せないですよね、この絵。」
「ええ、本当に。」
反射的に答えてからはて、と首をかしげる。後ろから聞こえた男性の声は、韓国語だった。ここはフランスなのに。
慌てて振り返ると、そこには長身の男性が立っていた。
涼やかな奥二重にふっくらとした唇、目の下に配置された泣きぼくろがなんともいえない色香を放っている。
「…ヒョンジン、さん」
そこにはジョンインが所属しているグループの一員である、ヒョンジンさんが立っていた。
「はじめまして、Aさん。僕のこと知ってくれてるなんて嬉しいな。」
にこり、ヒョンジンさんが小さく笑ってそう言う。
「そりゃあ…有名人、ですし。」
「昨日、イエニと仲良さそうだったよね。知り合いなの?」
「釜山にいた頃の幼馴染なんです。昨日、久しぶりに再会して。」
「そーなんだ!だからあんなに距離近かったんだ」
そんなあけすけに言わなくても…。
「昨日イエニ、なーんか機嫌良くてさあ。君と会えたからなんだね」
今理解した、と笑ったヒョンジンさん。イエナと仲良くしてね、と言うと機嫌よさそうにスキップして、その場を去っていった。
…何がしたいんだろう、その背中を見つめてまた首を傾げた。
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作者名:tomchi | 作成日時:2024年3月6日 21時