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「っ、びっくりした〜…」

 彼も深く帽子をかぶっているから、声を聞かなかったらジョンインだとは分からなかっただろう。
 「ちょうど散歩してたらAっぽい人を見かけて。人違いだったら大変だから、一応カトクした!」

 相変わらずの笑顔だ。笑うとできるえくぼ、昔と変わらない。

 「昨日は時間が限られてたから、こうして会えて嬉しいよ」

さらりとそんなことを言うものだから、
 
「私も…会えて嬉しい…」

 なんて、顔を真っ赤にして呟くハメになった。

 「えへへ、顔真っ赤だよA。かわいいね」

 ニコニコとこちらをのぞき込むジョンイン。こんなに甘いなんて聞いてない!

 「ちょっと…ファンにバレたらどうするの?大炎上だよ、こんなの」

 昨日2人で話していた場面だって、すぐにSNSに拡散されて私とジョンインの仲を疑う人々のコメントが溢れかえっていた。

 「そんなの、言わせておけばいいよ。僕はAが元気になってくれれば、それでいい」

 真剣な顔で彼が言うものだから、私は二の句が継げなかった。

 「…ありがとう。気にかけてくれて。」


 ジョンインは今日の飛行機で韓国に戻るらしい。さすが売れっ子アイドルだ。そのスケジュールはずっと先まで埋まっているのだろう。

 「僕、先に韓国に戻るけどまた会おうね」

 ひらひらと手をふるジョンインを見送って、私は気になっていた美術館に行くことにした。芸術品から得るインスピレーションもあるだろう。そう期待を込めて。

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作者名:tomchi | 作成日時:2024年3月6日 21時

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