Dolce (ページ2)

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母が死んだと知らされたのは、大学２年のときだった。

　「落ちついて、聞いてね。お母さんが、交通事故で亡くなりました。」

　音楽事務所のマネージャーにそういわれても、信じるなんてできなかった。
　母は丁度釜山の実家に用があり、1人で帰省していたのだった。
なにも考えられなかった。世界から音が消えたような感覚。
気づかわし気なマネージャーを横目に、大きなビルから逃げ出した。
母が死んだなんて、そんなはずない、これは、きっと悪い夢で、
息が切れるまで走って、走って。目についた公園に入って、よろよろとブランコに座る。
マネージャーが嘘を言うような人でないのは知っている。私が認めたくないだけ。

「おかあさん、おかあ、さん」
こんなに突然別れがくるなんて、知らなかった。
訳も分からず、大粒の涙がこぼれてくる。
お母さんがいない世界で、私が命を削って音楽をしている意味って、なに？私のヴァイオリンは、お母さんのためだけに存在していたのに。

静かな公園には、私の嗚咽だけが響いた。

そんな私をじっと見つめる視線があるなんて露も知らず。