171話 ページ48
振り返ると、肩幅に足を開いて立つ女の姿があった。
その両手には、何処から拾ってきたのやらマンシンガンが一丁。
いつも楽しげに笑う唇は今だけ真一文字に真っ白くなっていたから、その間から覗く真っ赤な舌はまるで血に見えた。
『よくもまぁ、いきなり幹部に手ぇ出せるよな。うちの国の団結力強いんは周知の事実なんにな』
その場の誰も動かなかった。動けなかった。
一ミリでも動いたら殺されると、肌が解っていたからだと思う。ヘビに睨まれた蛙、とは言い得て妙。
硬直する男たちに構わずAは話し続ける。
『そんな組織の一端に手出したら………自分が蜂の巣になったって文句言えんよな』
言いながら、彼女は機関銃のストックを肩へ押し付けた。
「!て、撤退!!」
『馬鹿が』
銃身が安定するや否や、迷わずトリガーが引かれる。
雨だれみたいだ、と乱射しながらAは思っていた。
なるほど確かに、床へ壁へ人体へ次々撃ち込まれていく銃弾の音はトタン屋根をリズミカルに叩くそれに似ている。石を穿つどころか一つの小さな建物を粉々にしようとしているけど。
「う、うわぁああああ!!!」
肩に響く一発一発の振動が、反動が、いつもなら愛おしいそれが今は邪魔でしかない。
普段、苦しめないよう殺すために放つ弾丸が空を切り裂く。
「極力苦しませない、せめて楽に」というAたちの戦い方の方針はいまや完全無視されている。なんなら、苦しめて殺したいと思った。
嫌な予感がして司令部小屋を覗いた時の、大好きな同僚の肩口から溢れる赤がさっきからずっと瞼に焼き付いている。
“了解。また忙しゅうなりそうや”
“はぁ!?!?”
“……そこが楽しい、やろ?”
雑面の奥の笑顔が脳内でリピート再生されている。なんだかんだ頼りになる奴だよなアイツは、とヘンな頭で考えた。
そのまま銃弾は空間を打った。
ーーーーー
気がついたら真っ白だった床も壁も真っ赤に染まって。
その場の誰も一言も発さなくなっていた。
終わった
それがわかって、カランと薬莢の落ちる音で同時にマシンガンも取り落とした。
『ぁ……』
震えた息が唇を通り過ぎてから、居ても立っても居られなくなって彼の元に走りだす。
『ロボロ!ロボロ!!!』
奥まったところにいたから奇跡的にマシンガンは当たってないが、ぐったりとした体からは大分出血しているようだ。
血の気のない唇に、ふと正気に戻ったような気がした。
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774号(現在稼働中)(プロフ) - Nebelさん» もちろんです!掲載は遅くなってしまうかもしれませんが……ですが、リクエストを頂けるの、本当に嬉しいんです!いつもありがとうございます!! (2022年8月19日 8時) (レス) id: a4d1e34ed0 (このIDを非表示/違反報告)
774号(現在稼働中)(プロフ) - マロンさん» ぁ、コメント欄に天使様が……!(跪く)今日中には1話更新できると思うのでどうかお待ちください…! (2022年8月19日 8時) (レス) id: a4d1e34ed0 (このIDを非表示/違反報告)
Nebel(プロフ) - !? 2つともリクエスト書いてくださるんですか!?本当にありがとうございます!!本当に4回目にもかかわらずリクエスト聞いてくださってありがとうございます!! (2022年8月19日 2時) (レス) @page40 id: ad724ae68b (このIDを非表示/違反報告)
マロン(プロフ) - リクエストを受けてくださるだけでありがたいです!いくらでも待ちますので、無理せず書いてくださいね (2022年8月19日 1時) (レス) @page40 id: 3bf4e7811a (このIDを非表示/違反報告)
774号(現在稼働中)(プロフ) - Nebelさん» 4回目!!!感涙です!!!もちろん、お受け致します!!!せっかくなので2つとも書いてしまいますね。マロン様のリクエストを書き終わったら直ぐ取り掛からせていただきます!! (2022年8月18日 11時) (レス) id: 982b5437b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:774号(現在稼働中) | 作者ホームページ:os復活!!うおぉおおおおおおおおおおおお!!!!
作成日時:2022年6月26日 21時