【d!】内ゲバせぇへん！？４

139話 ページ11

「はいはい、ちょっと退いて。診るから」



人混みをかき分けてAの前に立つペ神。
その横に置かれた注射器に目をやって、急に顔を真っ青にした。


「ちょっ…A、これ打たれたん！？」

『……ん…』

「やっ……これヤバいで！？一回城内帰らんと…！」

「そんなにマズイん？」

「多分体の小さいロボロが打っとったらとっくに死んでる。てかなんで今までそんな普通に話してたんや……」


「“体小さい”にキレとる場合ちゃうな、早よ運ばんと」

「A、立てるか？」


『っ……い、いけるでっ…』

笑顔で立ちあがろうとした瞬間、前に崩れ落ちる。


「イケとらんやないかい！！！」


コネシマが慌てて支えた。



『ごめ……寝るわ』

「うおっ…クソ、これマズイんちゃうか」


ガクッと意識を飛ばすA。
その弱体化した様子に、迷わず要塞の出口へと向かうことにした。


「A、A……！死ぬな…！」

『死んでへんわバーカ』

「じゃあ歩け重い」

『やだね今身体中痛いんや』

「お前ら元気だな…」



コネシマにおぶさりながら憎まれ口を叩くA。
何度か床に散らばった何かを踏むが、なんとか要塞の門に着く。

急いで待機していたともさんの車へ乗り込む。

シートにはビニールのカバーが付いていた。


「戦場帰りだから血とかで汚れてるかな〜って思ったんですけど…余計でした？」

「いや、全然っす、ありがとうございます」

「マジで返り血でぐしょぐしょなんで…」


それは良かった、と笑って爆速運転を続ける。
小さくなっていく、崩壊した要塞を眺めていたグルッペンがポツリと言った。


「地下牢にいたあの男………放置したのが気がかりだ」

「多分、Aに乱暴した奴よな」

「許されへんな。……でもまぁ何はともあれ、今はA奪還成功に素直に喜ぼうや」


「……そうだな」

「そういや、グルさんが言ってた買い物の他の目的ってなんなん？」

「あぁ、それは……ある国が裏取引を行うとかいう情報が入っていてな。その調査も兼ねようと思っていたんだが」

「それどころやなくなった、てことか」

「あぁ。残念だ」




揺れる車内で、いつのまにかまた眠ってしまったAの寝息だけが響いた。
喧嘩の声も響いていたが、Aを起こしたら可哀想だとトントンがしっかり粛清した。



その後、医務室へ強制送還されたAが1週間ほど起きなくて一騒動起こるのは…また別の話だ。

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