没分暁漢 (ページ10)

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終礼を終えるとトイレ行くから待ってて、という言葉を無視して俺はさっさと教室を出た。

紫耀は変わった、明確には言い表せないけど何かが。

昔はもっとこう…なんて言うか、暖かみのあるやつだった気がする。何気無い会話をする度にいつも自然と俺の口角は上がっていたんだから、間違いない。

今のあれを慕う皆には人として足りてない部分が見えてないのか？いつも俺のことを馬鹿にして…一緒に帰るのだってどうせ手なずけようとしてるだけで、都合のいい存在なんだろう。

悶々と考えながら階段を降りると下駄箱近くのトイレで何やら騒ぎ声が聞こえる。

うるさ、早く帰ろ…

｢ごめんなさ、許してｯ…｣

弱々しい訴えをかき消そうとする笑い声が耳に入ると、頭の中ではいやいやと言いながらも進行方向をくるりと変えた。

｢あ、廉じゃーん！ちょっと見てよ～こいつらやばいよね｣

と言いつつ、その女はクスクスと性悪な笑みを浮かべてびっしょり濡れている女の子を指さした。

｢何やっとんねんお前ら…高校生にもなってしょうもな、｣

｢わぁ、珍しいやつが来たぁ｣

なんだ。

よく見ればこいつら紫耀の取り巻きだ。
金魚の糞みたいにくっついて紫耀の前ではずーっとニコニコしてる気味の悪い奴ら。

｢…あら、あかんかった？｣

｢いやいきなりうけるんだけど。

良い子の廉君は早く帰ったら？｣

そう言って肩に乗っけられた手を
すかさず振り払うと女子達がこわぁー！と笑っている。

確かにそうだ。こっそり先生にチクって終わりでいいのに何だかそれではこの妙な胸焼けが収まらなかった。

これもあいつのせいだ。