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｢それ好きやな、｣
｢うん、美味しい｣
来る度に違うものを選ぶ自分とは違って
相変わらずソーダ味の氷菓子をぺろぺろ舐めてやっぱり紫耀だ、と金髪を眺めながらそう思った。
「ここまだやってたんだね、」
果てしなく続く田んぼ道にポツン、と置かれた駄菓子屋さんは俺と紫耀にとって馴染みの深い場所だった。
おばちゃんは俺が教えなかったら紫耀に気づいてなかったらしい。紫耀が冷凍庫をガサガサと漁っている間に
彼女は声を潜めて
随分染まったもんだねぇ、と楽しそうに笑っていた。
「…意外と来るから人が。」
「そっか、良かった」
ジリジリ、と蝉の鳴き声がやけに大きく響いている。緑に挟まれた田舎道の上を雲の影が進んでいく。
紫耀はずっと眺めていた。俺も疎らな空の色に染まったその瞳を追いかけているとその内鼓動が早くなっていくことに気づいた。
今日は三十五度超えてるって天気予報のお姉さん言ってたし頭がクラクラする。何か気持ち悪いなぁ。
「ねぇ、」
熱いんだけど。
と紫耀が振り返ってきたら咄嗟に目を逸らして口走りながら相槌を返した。
何故か火照った顔を冷ますようにアイスキャンデーを咥えると今度は紫耀の視線がグサグサと突き刺さる。
極力気にしない様に集中していたが余りにも直視してくるものだから流石に気が散る。
「…何。ついとる、？」
「いやなんか、何でもないや。…へへっ、俺にも一口ちょうだい」
「ん。一口だけやからな、絶対全部食うなよ、ほんまにちょっとだ…」
紫耀の綺麗な顔がフレームアウトしたかと思えばその直後、
冷たいような生暖かい舌が俺の口端をペロリ
と舐めた
差し出したアイスキャンデーは
虚しくぽたぽたと手を伝って溶けていく
それはきっと俺が生きている中で一瞬に過ぎない時間、だけど。
「…へ、」
一つ瞬きをすると紫耀の顔がはっきりと写った。愛おしいものを見るような光悦感に満ち足りた黒の中には、呆けたようにキョトンと口を半開きにした俺がいた。
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作者名：麗 | 作成日時：2020年9月2日 1時
