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｢悪いけどもうしょおと関わらんとって｣
無意識にそう言葉に出て驚いたのは目の前のこいつらではなく自分自身だった。
別に庇ってるわけじゃない、俺はあいつのことなんか大嫌いだ。
でもこれと同じ種族に見えるあいつが何故
その群れの中にいて一人浮いて見えるのか、
それが分かったならこの猿達には教えてやるのが優しさってものだろう。
｢何が目的であいつに付きまとっとんかは知らんけど
こんな所見られたら、もう口も聞いて貰えんのんやない？｣
分かりやすいようにちゃんと身振り手振りもつけて丁寧に説明してやったというのに間抜けな声で頭に疑問符を浮かべては悪態をつきながらこちらに向かってくる。
｢あいつはお前らみたいな奴が一番嫌いやと思うけど。って忠告してやっとるだけやん｣
紫耀の名前を出すとギクッ！とやはり分かりやすく動揺して思わず鼻から笑い声が漏れた。先生に言いつけると言われた幼稚園児とさほど変わらない、情けなさすぎる。
｢あーあ、綺麗な顔なのに勿体ねぇ｣
しまいには暴力沙汰、顎をぐっと持ち上げられれば鋭い眼差しとぶつかった。
｢ねぇだーめだって、廉はやめて！｣
殴られる直前、女が慌ててガタイのいいやつのシャツの裾を引っ張るとその男は渋々手を下ろしたが、その代わり床に転げてあったホースの口をこちらに向けてきて反抗する間もなく全身に水を浴びせられた。
ﾊﾞﾁｬ…
｢…覚えとけよ。｣
在り来りな捨て台詞を吐いてそいつらは出ていき、
バタン、と勢いよく閉められたドアの音が
二人沈黙の中に響きわたる。
｢あの…っごめん、ほんとにごめんね…｣
泣き腫らして目元を真っ赤にした女の子は
水を絞ったハンカチを差し出してきた。
｢ええよ、別に。それ濡れとるからこっち使っとき｣
使ってないタオルを投げてやると、
え、あ、と戸惑いながらまた泣きそうになっているので｢じゃ、｣とそさくさにその場から離れようとしたその時、弱々しい大きな声が
俺の足を制した。
｢…何？あの全然気にせんとって。
そのタオルも返さんでええし…｣
｢…違う、好きなんです…永瀬君のことが｣
｢え…ちょっと、｣
普通このタイミングで…いや、
先の言葉を察してストップをかけようとしたその時、頭にふと、ある考えが浮かんだ。
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作者名：麗 | 作成日時：2020年9月2日 1時
