没分暁漢 (ページ2)

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「…何で。帰って来るなら電話くらいよこせや」

感動の再開、という気分にもなれず
そうぽつりと不満を零した

だってあの日紫耀は何も言ってくれなかった。

俺は翌日お前のいない学校から帰ってきて、初めて東京に引っ越したってことを親から聞いたんだ。

その時俺は酷く落胆した。

紫耀ともう会えない、という事実よりも

小学校も中学校も、ずっとずっと一緒だったのに。親友ってそんなものなのか。お前にとって俺ってそれだけの存在なのか、と

そんな俺の気もしれないでまたごめんごめん、と笑いながら軽く流すこの男。

揺れる度に覗くアクセサリーがキラキラと光るのが鬱陶しくて堪らなくて、嫌味ったらしく吐き捨ててやった。

「…似合ってないで。その髪とピアス」

「…廉も開けたいんだぁ。軟骨やってあげるよ？痛いけど。」

「あのな、」

ため息の後に口を開こうとしたら
それまで頬を赤く染めていた女子達がねぇねぇ！と割って入ってきた

いつもより甘いその声色に、お前は気づくわけが無い。

あからさまな下心に気づかず、紳士的に対応する姿に何だか苛立ちを覚えて

俺はぐるりと身体の向きを変えると授業の準備を始めた。