自由行動 ページ23
「Aちゃん、ミルクティー出来たよ」
不意にそう呼ばれ、私は探索を一時中断するとマンちゃんの側に駆け寄る。
マンちゃんに差し出された白いカップには、透明感を失った香色の紅茶が艶を持って輝いていた。
「わっ、いい香り…」
私はそのカップを両手で受け取ると、カップの中を覗き込むように香りを口に含んだ。
「どうぞ」とマンちゃんが勧めてくるものだから、私も行儀があまり良くないのは承知で、立ったまま一口だけ口を付ける。
ミルクで下げられた温度は程よく、口の中に含んでも茶葉の香りが全体へ広がっていく。
「マンちゃん、紅茶淹れるの上手なんだね」
「ん、よく飲むからね」
そう言うとマンちゃんは湯気が立つカップに口をつけた。
私とは違って、透明感のあるストレートティーを飲んでいるようだ。
大人っぽいなぁ、なんてぼんやり考えながら私はもう一口ミルクティーを飲み込む。
「そう言えば、ゾムくんが言ってた包丁ってあれのことかな?」
二人してうっかり立ち飲みを続けながら、私は目に入った包丁達を指差した。
木製の包丁立てに、隙間なく包丁がしまわれている。
マンちゃんはゾムくんの名前を出して顔を顰めかけたが、少し遠くにある包丁を視界に捉えると頷いてくれた。
「まだ誰も使ってはないみたいやな、あれだけ綺麗に片付けられとったら減ってもすぐ分かる」
「そうだね、やっぱり殺し合いなんてよくないよ」
包丁は全部で八本程だろうか、大きさも用途もそれぞれ違いそう。
無論、素人目から見てはどれが何に使う専用のものなのかよく分からないが。
「…よし、この一杯を飲み終わったら食堂に戻ろうか」
「うん、マンちゃんの淹れるミルクティー美味しかった」
「ほんま?じゃあまた飲みたくなったら言ってな、俺淹れるから」
何故だろう、マンちゃんといるとどうも彼の言葉に甘えたくなってしまう。
そう自覚しつつも私は「ありがと、また頼むね」と返してしまう。
最後の一杯を惜しみながらも慌てて飲み干すと、空になったカップを家庭用と比べて大きな食洗機に並べた。
コース選択をしてスタートボタンを押すと、動き出した食洗機を見届けて。
私とマンちゃんは、厨房を後にする。
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わたうさ@火星人☆(プロフ) - blackappleさん» そのまま本家のキャラを持ってくるのもどうかと思ったので、茶番ちゃんにしてみました!体験版なのでストーリーは違いますが、本編もよかったら覗いてみてください!有難うございます! (2019年8月15日 1時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
blackapple(プロフ) - モノクマさんまさかの茶番ちゃんですか笑すごく好きです! (2019年8月14日 20時) (レス) id: a2bedeb8e6 (このIDを非表示/違反報告)
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