CHAPTER 06 劣等生はタンポポを根から食う 捜査 ページ40
「これ、鎮痛剤。何もないよりマシだと思って」
エーミールくんがゾムくんに圧迫止血を施す傍らで、その右腕に注射器で鎮痛剤を打つと「ありがとう、Aさん」とエーミールくんは目を細めた。
即効性はないだろうと思っていたが、次第にゾムくんの眉間に寄せられていたシワが消えていく様を見るに鎮痛剤の効果はもう彼に影響を与え始めているらしい。
流石、茶番ちゃんクオリティとでもいうべきか。
「治ったわけじゃないからね。痛くないからって、無闇に患部は触らないように！」
「……ぉん」
本調子とはいかないものの、ようやくそれらしい返答がもらえて私の強張っていた顔も自然と緩むことを覚え始める。
包帯を巻き終えたエーミールくんは、断面が下を向いてしまわないよう更に三角巾を巻きつけていた。
「右腕は？」
「保健室に置いてきたよ。エーミールくんに言われた通り袋に入れて、今は氷と一緒にクーラーボックスに入れてる」
そう答えると、エーミールくんはゾムくんの背中側で三角巾を結び、彼の腕を固定しながら「それなら良かった」と頷く。
新品の白い包帯に包まれたゾムくんの右腕はすっかり血が止まり、シャオロンくんの二の舞だけは回避できたのだと胸を撫で下ろした。
「ごめんなさい。素人やから、気休め程度の処置しかできてへんけど」
「…ぃやっ。シャオロンのこともあるし、おれ絶対今ので死んだと思ってたから……あざす」
ゾムくんは慣れない様子で「二人共のお陰でだいぶ頭も冷えてきたし」と言いながら、左手で自身の頭をかいた。
一瞬彼の右肘が動きかけたところを見るに、鎮痛剤で痛みを無くしたことも相まって、利き手がないという事実を受け入れ切れておらず戸惑っているようだ。
「その腕は、やっぱり茶番ちゃんにやられたの？」
エーミールくんに支えられながら立ち上がるゾムくんにそう尋ねると、途端彼は苦虫を噛み潰したような顔になって頷いた。
「…ぶっ壊してやるつもりで距離詰めたら、相討ちになってん」
彼の「相討ち」という言葉に、首を切り落とされて動かなくなった茶番ちゃんのことを思い出す。
いくらあの殺人マシーンを止めるためとはいえ、人形の首を切り落とすためだけに利き腕を失ったのはあまりにも代償が大きすぎる。
納得いかない、という私の考えが顔に出ていたのか、ゾムくんは私を見て「アレはしゃーないって！」と笑った。
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わたうさ@火星人☆(プロフ) - 海月空麗さん» わわっ、お久しぶりです！コメントありがとうございます！かなり時間が空いての更新になってしまいましたが、長い間お待ち頂き本当にありがとうございます…！！次回から裁判に入りますので完結目指して少しずつ更新していく予定です！ (11月27日 14時) (
レス) id: c8d2ef1162 (このIDを非表示/違反報告)
海月空麗(プロフ) - 更新ありがとうございます！ついに最後の裁判でしょうか…！？続きがとっても気になります！ここまで壮大なストーリーを文字に起こすのはとても大変かと思いますが、本当にいつまでも待ち続けております！頑張ってください！！ (11月27日 7時) (レス) @page43 id: b999c1cd0b (このIDを非表示/違反報告)
そな(プロフ) - とても続きが気になります、すごく面白いです！更新待ってます (9月4日 0時) (レス) @page42 id: 8240083825 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - わたうさ@火星人☆さん» 返信ありがとうございます。創作論破の中でも凄く面白いので是非納得のいく完結を目指してください。小説のレベルも高く、ストーリー構成も良い。こんな創作論破早々ないです。本当に貴方は素晴らしいんです。自分あと50年くらいは待てます。何度も見返すほど大好きです (2023年4月3日 0時) (レス) id: 7eafda20b9 (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 紅葉さん» この一ヶ月ほどは再始動に向けて執筆も再開したのですが、何度も過去の話を読み返しながら書いているため以前より筆が遅くなっています。 更新を再開して以降も一話ごとにお待たせしてしまうことも多いと思いますが、完結に向けて着実に書いていこうと思います！ (2023年4月2日 14時) (レス) id: c8d2ef1162 (このIDを非表示/違反報告)
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