CHAPTER 06 劣等生はタンポポを根から食う 捜査 ページ32
「落ち着いて、エーミールくん。私、こういう時の対処法知ってるから」
「えっ！ほんま？」
そう言った私に、エーミールくんは「意外やな」と呟きながらサッと避け、モニターの前を私に譲った。
そこで準備が整った私は袖をまくり上げた右腕を振り上げ……バンッと鈍い音を立てながら、モニターを思い切り叩いた。
「っえ」
「家電は大体、こうやって、叩くと！直るって、聞いたこと、あるからっ！」
私の行動に目を丸くするエーミールくんを気にせず、私は途切れ途切れの言葉に合わせてバンッ、バンッ、バンッとモニターを叩き続ける。
しかし画面は相変わらず真っ暗なまま、キュルキュルと歪な音を立て始めていた。
私は単に叩く力が足りていないのだと思い、更に体重をかけて叩くため、助走をつけようと数歩後ろへ下がった途端。
「ちょっ、ちょちょっ、待って！」という声と共に、背後からエーミールくんによって羽交締めにされた。
「叩いたら直るっていつの時代や！余計悪くなるって！」
「っえ…！？」
「でも…」と抵抗しようとすれば「さてはAさん家のテレビ、ブラウン管やろ！」と言われてしまい、私はそれ以上の抵抗を止める。
すると、ようやくエーミールくんによる拘束の手が緩まり、私たちは互いに落ち着きを取り戻した。
「……ブラウン管は二階の部屋にしかなかったよ」
「やっぱりあるのかよ」
ブラウン管だったのは、あくまでも二階の部屋だけだ。
それを勘違いされたくなかった私の強調に、エーミールくんは疲れたような苦笑いを浮かべた。
しばらくしてパッと暗闇から解放されたモニターには、チカチカと目に悪そうな光で、正体不明の縦線を画面いっぱいに表示した。
「あ〜あ…」
「これって、もう一回叩いたら直ったりしないかな…」
「…………」
肩を落としたエーミールくんに、なんの根拠もなくそう提案してみると、思いの外彼は真に受けたらしく自身の腕を振り上げた。
そして、先程私が叩いたのと同じように、モニターをバンッと一度叩いた瞬間。
バキッという鈍い音と共に、彼の手が本来固いはずのモニターに食い込んだ。
「あっ」
モニターの一部だったのであろう、小さな破片がぱらりと落ちたのを見て、私とエーミールくんは声を漏らした。
それとほとんど同時に、ジリリリリッというけたたましい目覚まし時計のような音が部屋中に響き渡った。
CHAPTER 06 劣等生はタンポポを根から食う 捜査→←CHAPTER 06 劣等生はタンポポを根から食う 捜査
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 373人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 海月空麗さん» わわっ、お久しぶりです！コメントありがとうございます！かなり時間が空いての更新になってしまいましたが、長い間お待ち頂き本当にありがとうございます…！！次回から裁判に入りますので完結目指して少しずつ更新していく予定です！ (11月27日 14時) (
レス) id: c8d2ef1162 (このIDを非表示/違反報告)
海月空麗(プロフ) - 更新ありがとうございます！ついに最後の裁判でしょうか…！？続きがとっても気になります！ここまで壮大なストーリーを文字に起こすのはとても大変かと思いますが、本当にいつまでも待ち続けております！頑張ってください！！ (11月27日 7時) (レス) @page43 id: b999c1cd0b (このIDを非表示/違反報告)
そな(プロフ) - とても続きが気になります、すごく面白いです！更新待ってます (9月4日 0時) (レス) @page42 id: 8240083825 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - わたうさ@火星人☆さん» 返信ありがとうございます。創作論破の中でも凄く面白いので是非納得のいく完結を目指してください。小説のレベルも高く、ストーリー構成も良い。こんな創作論破早々ないです。本当に貴方は素晴らしいんです。自分あと50年くらいは待てます。何度も見返すほど大好きです (2023年4月3日 0時) (レス) id: 7eafda20b9 (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 紅葉さん» この一ヶ月ほどは再始動に向けて執筆も再開したのですが、何度も過去の話を読み返しながら書いているため以前より筆が遅くなっています。 更新を再開して以降も一話ごとにお待たせしてしまうことも多いと思いますが、完結に向けて着実に書いていこうと思います！ (2023年4月2日 14時) (レス) id: c8d2ef1162 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
