54 ページ4
「…ん？でも何でジロちゃんは死ななかったの？」
ふと疑問に思い、私は思わず口に出した。
確か永久狐さんに教えてもらったのは、手を繋ぐと妖力を全て吸い取り死んでしまうと言うもの。
だからサイトさんとも手を繋ぐなと強く言われたのだが、目の前のジロちゃんはその方法で妖力を奪われ、今も生きている。
「…嗚呼、そりゃ犬神さんやからな」
「っえ、犬神だと死なないの？」
「そう言う訳やないけど…強いて言えば、階級が高いからやろ」
「階級…」
そう言えばサイトさんは低級妖怪。
元々比較的妖力の少ないサイトさんは直ぐに全ての妖力を吸い取られてしまうのだろう。
それに比べて階級の高い妖は、その分妖力も多いと言うこと。
「…妖の世も階級ってことだね」
「そう言うこと」
生まれつき低級妖怪のサイトさんには少し不利な世界でもある訳だ。
ある意味人間より妖の方が上下関係に厳しかったりして。
「でも其れでお婆ちゃんに妖力を取られちゃったなら、取り返せば良いんだよね！解決したも同然だ」
「…？何言うてんの、解決も何も方法があらへんよ」
「…え、そうなの？」
すっかり解決した気になっていた私に対して、永久狐さんは思いもしなかった現実を突きつける。
案外取られた妖力を取り返すだなんて幾らでも方法がありそうなものなのだが。
「妖ならまだしも、人間は妖力の使い方なんて知らんやろ？」
「…んまあ、確かに自分に妖力があるのかすら分かんないけど…練習すれば何とかなるんじゃないの？」
私の言葉に永久狐さんは首を振りながら「一生無理。二百年練習すれば何とかなりそうやけど、人間はそんな生きられへんやろ？」と言う。
思いの外大きな数字に私も、目を丸くすることしかできなかった。
「陰陽師の奴らすら其れが出来んかって妖に喰われ死んだのに、無知の人間が覚えられる筈ないやん」
「…そっか」
言われてみれば、そんな妖力を返すだのどうこう出来るのなら、抑えることだって可能なのだ。
しかし其れが出来ないから妖たちに狙われるのであって、特にあんなお婆ちゃんが其れを数日で極められる筈もない。
お婆ちゃんに比べて体力もある私すら出来ないから、永久狐さんに今守ってもらっているのだ。
「方法と言っても、精々あの婆さんごと喰らうしかないやろな」
「そんな…」
衝撃の事実にジロちゃんを見ると、ジロちゃんは永久狐さんの言葉に俯いていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 773さん» 此方こそ丁寧にありがとうございます！そう言って頂けると幸いです！ただ拙い過去作が多いので、少し恥ずかしいですね(´ｰ｀) (2020年2月1日 11時) (
レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
773 - ご丁寧に返信ありがとうございます！作者様のセンスがとても好きなので、他の作品も拝見させて頂きますね^^ (2020年2月1日 2時) (レス) id: 05e1d06f85 (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 773さん» コメントありがとうございます！今は更新予定ありませんが、作品を削除するつもりはないので気長に待って頂けると幸いです！ありがとうございます！ (2020年1月31日 9時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
773 - 三年前の投稿に申し訳ないのですが、更新を心待ちしています！ (2020年1月30日 6時) (レス) id: 05e1d06f85 (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 柑橘みかんさん» 本当ですか！こんな作品に時間を使って頂き有難う御座います！たまにしか更新はしていませんが、頑張ります！！ (2018年1月24日 6時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
