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「あっ、でも肉じゃがしかないや」
そう言って夢崎さんは「肉じゃがだけで済ませるつもりだったからなあ」と付け足した。
肉じゃがって、女の子の料理が上手いか下手かを見分ける定番料理だった気がする。
まあ夢崎さんが料理上手いことは知ってるし、今更見分ける必要も無いのだが。
「私は良いけど…それだけだと清川くん、物足りないでしょ?」
「いや、別に俺はそれだけでも…」
夢崎さんの料理が3度も食べられるならもう正直何でも良い。
好きな子にも何だか無理はさせなくないし。
しかし夢崎さんは、「私の気が収まらないから、もう一品作るね」とキッチンに立ち始めた。
意外にも頑固なんだろうか。
冷蔵庫からビニール袋に入った何かを取り出し、キッチンに並べるのが見えた。
ありゃ、こりゃ何言ってももう無理だな。
諦めた俺は、先程まで夢崎さんの足元をうろちょろとしていた猫を抱いた。
前来た時は大分俺に懐いてたのに、もう俺を忘れてしまったのか、今にも俺の手からするりと抜け、夢崎さんの方へ行ってしまいそうだ。
夢崎さんの飼い猫である此奴は、いつも夢崎さんに可愛がって貰っているのか。
朝起きたら夢崎さんが居て、玄関で仕事帰りの夢崎さんを待って、お風呂のときも寝るときも、夢崎さんを見てる。
ああ、羨ましい。それと同時に自分が変態な気がして怖い。
「…猫になりたい…」
此処まで猫を羨ましく思ったのは、受験勉強をしている時くらいだったか。
でも今は、のんびり気楽な猫に憧れているのではなく、夢崎さんの隣に居られる猫に憧れている。
本当、考えれば考える程自分が気持ち悪くなっていく。
「えっ?清川くん、猫になりたいの?」
「へっ!?えっ!あ、聞こえた?」
「うん。清川くんが猫なら、飼い易いだろうね」
夢崎さんはそう言うと、微笑んで見せた。
もう、夢崎さんに飼われるなら本望だ。
しかし夢崎さんはハッとして、「あっ、でも清川くんは飼うと言うより野良かな?」と付け足す。
野良なら、いつも夢崎さんが仕事帰りに煮干しを持って会いに来てくれたらどれだけ嬉しいか。
ただ想像だけが膨らんでいく。
何だか想像のし過ぎで、自分が猫になったような感覚に麻痺し始めた。
流石にそれはまずいだろうと、俺は勝手にテレビの電源を入れる。
「あっ、暇だった?ごめんね、直ぐ作るから」
テレビの電源を入れた俺を見て、夢崎さんも料理に集中し始めた。
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私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 千里さん» はい、安心してください!最終的にはレトルトさん落ちです!最終的には!更新頑張ります!有難う御座います! (2016年6月16日 21時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
千里(プロフ) - 私@ウサギちゃん☆さん» で、ですよね!安心しました(震え声)更新楽しみにしてます笑 (2016年6月16日 19時) (レス) id: 2e848126ea (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 彩華さん» 最近やっと書き方が安定して来ましたが、まだまだです(・_・)そう言って頂けて嬉しいです!読み易ければ幸いです!有難う御座います! (2016年6月16日 6時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 千里さん» 読み返すと自分でも不安になりますが、勿論レトルトさん落ちです!確かに最近キヨさん寄り…こ、此処からですよ、きっと(震え声) (2016年6月16日 6時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - どーやったらこんな上手い文書けるんですか。(´・_・`) (2016年6月16日 0時) (レス) id: 2d791a81b5 (このIDを非表示/違反報告)
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