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「今日はもう上がって良いですか?」
「えっ、まだ三十分あるよ?」
もう教育係ではなくなったが、私達の責任者である高橋さんにそう言うと、側にいた津和くんがそう言って時計を見た。
「どうしたの夢崎さん、用事?」
高橋さんは一旦作業の手を止め、私に尋ねた。
「あっ、はい。今日来客があるんで…」
「成る程…仕事終わってからじゃ間に合わない?」
そう言われ、私も津和くんと同じ様に時計を見た。
津和くんは三十分と言っていたが、下手すれば四十分はまだありそうだ。
「…ちょっと、間に合わなそうです」
レトくんが来るのは、レトくんの仕事が終わる夜。
まだ外も明るい今、レトくんがうちに来る気配は到底ない。
つまり嘘だ。
しかし、来るまでに部屋を片付けたいし、余裕を持って行動はしたい。
そう言う事情で嘘を吐くのも、良くあることだ。
「…今日は人手足りてるし、うん、良いよ」
高橋さんの答えに、私はお礼を一言言った。
その時、高橋さんから「明日は最後まで残って貰うから」と言われたが、今日が良ければ明日なんてどうでも良い。
私はその条件を飲み、津和くんに帰ることを伝えるとそそくさと控え室へ戻った。
「あれ夢崎さん、もう帰るの?」
「はい、用事で…」
控え室に入った途端、そこにいた女性の先輩にそう尋ねられた。
応えると「そっか、お疲れ様!」と言って私の肩を軽く叩く。
「お先に失礼します」
「はいはーい」
先輩のその声を聞くと、軽い会釈をして戸を閉め、店を出た。
もう仕事場を離れれば、思い浮かぶのはその後のことばかりで。
掃除と言っても、部屋なんて少し物を隅に寄せれば良いだけで、それなりに片付いているし。
今から、レトくんにご馳走する晩御飯を、買い物でもしながら考えようかなんて。
「…ちょっと今の私、気持ち悪い」
友達が家に上がるってだけでこんな子供みたいにはしゃいでる。
夫の帰りを楽しみに待ってる、新婚一日目の妻みたいな。
いや、例え方が悪いか。
何方かと言えばレトくんの方が奥さんっぽいな、なんて少しふざけてみる。
そんなことを考える自分にか、それともエプロン姿で不器用に料理をするレトくんを想像してか。
思わず笑ってしまった。
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私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 千里さん» はい、安心してください!最終的にはレトルトさん落ちです!最終的には!更新頑張ります!有難う御座います! (2016年6月16日 21時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
千里(プロフ) - 私@ウサギちゃん☆さん» で、ですよね!安心しました(震え声)更新楽しみにしてます笑 (2016年6月16日 19時) (レス) id: 2e848126ea (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 彩華さん» 最近やっと書き方が安定して来ましたが、まだまだです(・_・)そう言って頂けて嬉しいです!読み易ければ幸いです!有難う御座います! (2016年6月16日 6時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 千里さん» 読み返すと自分でも不安になりますが、勿論レトルトさん落ちです!確かに最近キヨさん寄り…こ、此処からですよ、きっと(震え声) (2016年6月16日 6時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - どーやったらこんな上手い文書けるんですか。(´・_・`) (2016年6月16日 0時) (レス) id: 2d791a81b5 (このIDを非表示/違反報告)
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