【実況者】黄色い糸。４【レトルト】

黄色168 ページ18

「レトさん、ちょっとスマホ見て良い？」


「は？」



昼休みにレトさんと待ち合わせしたカフェで、待ち合わせの本題を切り出すと、訝げにレトさんは一文字だけ吐いた。


実は俺、結構夢崎さんのことで落ち込んでるんだけど。



そんな俺を露知らず、いつも通りのレトさんを見ていると、どうでも良くなって来た気もした。


だが、実質どうでも良くない。



初恋は叶わない、なんて言うけれど、俺は叶わせて見せたい。


これからの約55年、あれ程の完璧美女、現れるだろうか。



少し俺のタイプとは違ったが、どうせ好きな人ってそんなもんだし。


今俺は、夢崎さんと結ばれなければこの先、幸せな生活が待っているとは思えない。



それ程俺の中では、深刻なことだったのだ。



「いやさ、レトさんって普段カメラで何撮ってんのかな〜って」



「お前、この前も見てたやん」


「この前はちゃんと見てなかったの！」



手強い相手にも思えたが、「仕方ないな…」と面倒くさそうにぼやきながら、レトさんはポケットからスマホを取り出した。


そして俺に一言「壊すな」と忠告を入れて、俺の目の前に置いた。



俺はまるで、飼い主に「よし」を言われ餌をがっつく犬の様に、そのスマホへ飛び付く。



レトさんのスマホを借りたのにも理由がある。


夢崎さんのスマホには、沢山のレトさんとのツーショットがあった。何処で撮ったのかも分からない、プリクラも。



全てレトさんは嫌々写っていたとは言え、やけに多過ぎるし、もしかすると二人は付き合っているのではないか。


そんな考えも過る。



夢崎さんからはただ「親友」としか言われて居ないが、レトさんは事実夢崎さんが好きらしいし。


昔夢崎さんはレトさんのことが好きだった、付き合っていたが別れた、と言う可能性も考えられない訳じゃない。



そう思い、酷く波打つ胸を押さえながら写真を最後までスクロールさせていくと。





「よ…良かった、無い」


「あ？何が無いん？」



良き結果に思わず口に出してしまい、首を傾げるレトさんに突っ込まれた。


そんな俺は少し吃りつつ、「何でもない！」とレトさんにスマホを返す。



どうやら付き合っていた訳では無さそうだが。


一瞬ではあったものの、夢崎さんの写真の中には幾つが不意をついた隠し撮りもあった。



後々ばれて追い駆けっこになったのは写真を見ていくと分かったが。



まだ夢崎さんが、密かにレトさんを好きだという可能性は残っている。

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