【実況者】黄色い糸。４【レトルト】

黄色165 ページ15

「…何だったんだろ」



あんなに取り乱した様子の清川くんは初めて見た気がする。


付き合いは浅いく中学時代から人見知り女嫌いではあったものの、彼は昔から感情がどうも読み辛い場面も多かった。



そんな清川くんの少し無理した様な笑顔に、違和感も覚えたが。


ただの他人に過ぎない私が口を出しても、清川くんの疲れを悪化させるだけなのかもしれない。



【清川くん、雨大丈夫だった？】



敢えて清川くんの変化には気付かなかったフリをして。


今頃タクシーでも捕まえたであろう清川くんのトーク画面にそれだけを送っておいた。



清川くん、仕事で嫌な先輩が居るとか。


もしかして、親が病気になって実家に戻るとかかな。



清川くんをそうさせてしまった原因を色々思い描いても見るが、真実に辿り着いたってきっと私は見ているだけ。


それなら知らず、あまり何も考えず彼をそっとしておく方が無難なのかもしれない。



ピコンッ



すると明るい音を立てて、スマホの画面がついた。


それには、スマホに歩み寄ろうとしていた猫も驚いた様子で飛び跳ねる。なんか馬鹿っぽい。



通知を流しながらスライドさせると、清川くんとのトーク画面に辿り着く。もう返信してくれたのか。



【全然大丈夫！帰りの電車が一本だけあったから、それに今乗ってるよ！】


どうやらタクシーを捕まえなくても、電車で帰れたらしい。



やけに挙動不審だったから、発狂してそのまま濡れながら帰ってしまうのではと少し心配もしていた分、安心した。


私は「それなら良かった」と送り、その後に胸を撫で下ろす猫のマスコットが描かれたスタンプを送る。



それには直ぐに既読も付き、そろそろ会話も終わるかと思いLINEを閉じかけたところで。


あまりLINEの会話を長続きさせない彼にしては珍しく、返信が送られてきた。



【あのさ】


【我儘でごめん】


【俺まだ、夢崎さんと話してたい】



一気にそう送られてきて、その予想外の言葉に頭が混乱し掛けた。


さっきは私を態とらしく避ける様に帰って行ったのに、LINEになるとこんなことを頼んで来るなんて。



いつもなら、ここら辺で清川くんが締めの言葉を送って来て会話が終わるのだが。


今日だけは違い、私はアプリを閉じようとしていた手を止めた。




【じゃあ、ちょっとだけね】


そこまで遊んだりする仲でも無かったからか、そう頼まれることが少しだけ、嬉しかった。

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