黄色162 ページ12
夢崎さんの言うもう一品とは、魚の煮付けだったようだ。
砂糖とみりんの甘い香りに強い醤油が混ざり、どうも食欲をそそる。
「ほら清川くん、座って座って」
夢崎さんは椅子を引き、其処へ俺を押して向かわせた。
こんな行動も、他の男にしているのか、俺だけではないのか。
そう思うと少し気持ちも沈んだが、敢えてそれは顔に出さなかった。
「ん、美味い!」
「本当?良かった」
しかしそれを口に運ぶと、何だか心も少し和らいだ。
本当に夢崎さんって料理が上手だ。
そんな夢崎さんに、俺も惹かれていったんだろうか。
こんな完璧な女性に育った夢崎さんに、俺同様惹かれる男も少なくはないだろう。
「…ねえ、夢崎さん」
「あっ、喉乾いた?」
「いや、そうじゃなくてさ」
今にも水を注ごうとする夢崎さんに思わず真剣な声になりかけたが、今の俺の気持ちを夢崎さんに知られることを恐れて、笑顔を無理矢理浮かべる。
そんな俺に、夢崎さんはこれから話すことの重要さなど勘付いた様子はない。
「…夢崎さん、その、…一番仲の良い男友達って居るの?」
「えっ?…うん、居るけど…多分清川くん知らない人だよ?」
「良いよ、どんな人?」
そう尋ねると、「改めて聞かれてもなあ…」と夢崎さんはぶつぶつ考え出した。
そんな表情も、やはり可愛らしい。
「…レトくんって言ってね。結構面倒くさいけど、優しくて面白くて…一緒にいて、楽しい人だよ」
「優しい清川くんなら、きっと直ぐ仲良くなれるよ」なんて付け足され、俺は肩の力が一気に抜けた。
レトくん…か。
やっぱりあの写真と言い、この呼び名と言い。
その夢崎さんと仲の良い男友達とは、レトさんだと思って間違いなさそうだ。
「…で、どうしたの?そんなこと突然聞いて」
「あっ、いや、何でもないよ!何かちょっと気になっただけで…」
語尾の小さくなる俺には気が付かず、夢崎さんは「そっか」と笑顔を浮かべた。
じゃあもしかして、レトさんが良く相談してきた「好きな人」ってのは、夢崎さんのことなんじゃ…。
でもまだレトさんの好きな人が夢崎さんだと決まった訳じゃない。まだ知り合いと言うだけで。
「今度、紹介するね」
…いや、そうでもないか。やはり俺が夢崎さんと結ばれることは、一生無理なのかもしれない。
夢崎さんの見たこともない柔らかい笑顔に、思わずそう感じた。
俺に残ったのは、たった少しの願掛けのみだ。
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私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 千里さん» はい、安心してください!最終的にはレトルトさん落ちです!最終的には!更新頑張ります!有難う御座います! (2016年6月16日 21時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
千里(プロフ) - 私@ウサギちゃん☆さん» で、ですよね!安心しました(震え声)更新楽しみにしてます笑 (2016年6月16日 19時) (レス) id: 2e848126ea (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 彩華さん» 最近やっと書き方が安定して来ましたが、まだまだです(・_・)そう言って頂けて嬉しいです!読み易ければ幸いです!有難う御座います! (2016年6月16日 6時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 千里さん» 読み返すと自分でも不安になりますが、勿論レトルトさん落ちです!確かに最近キヨさん寄り…こ、此処からですよ、きっと(震え声) (2016年6月16日 6時) (レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
彩華(プロフ) - どーやったらこんな上手い文書けるんですか。(´・_・`) (2016年6月16日 0時) (レス) id: 2d791a81b5 (このIDを非表示/違反報告)
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