黄色141 ページ41
「…この小説も捨て難い」
私は今、ある二冊の本を手に睨む様に眺めていた。
片方は賞を取ったとテレビでも噂の小説で、題名がまさに私の興味を引くものだ。
そしてもう片方は、高校の頃愛読していた小説の続編。
元々本は好きだったし、本屋は私にとって魅力的な物しかない。
レトくんはどうやら漫画売り場に行った様で、私も久々に漫画でも眺めてみようか。
「…まず、この二つは保留！よし」
そう決めたところで漫画売り場へ足を進めようとした時。
真後ろにはレトくんがいた様で、視界にどアップのレトくんが入った途端思わず飛び退いた。
「…び、びっくりした…」
「えっ、あ、ごめん…」
私はレトくんのいる漫画売り場へ行こうと思ったのだが、当のレトくんは買いたい物が決まったらしく、数冊漫画本を手にしていた。
まあレトくんの元へ行くつもりだったし、結果オーライか。
すると不意に、レトくんが「悩んでんの？」と尋ねてきた。
「あ、ああ、うん。両方共面白そうで…」
それは自分の先程まで悩んでいた二冊の小説のことだと分かり、そう返す。
本当にどちらとも面白そうだ。
愛読していた物の方は、続編が楽しみではありながらも高校時、結局時間とお金が無く買えずにいた物だった為尚更。
「両方買えば良いのに」
「だめっ、本にお金使うつもり無かったし…ほぼゲーセンに使うつもりで来たからっ…」
絞り出すような声でそう言うと、レトくんは何とも言えないようで苦笑いを浮かべる。
確かに食べたかったと言うのもあるが、昼をマックで済ませた主な理由は、お金をあまり使いたくなかったからだ。
実はレトくんと出掛ける＝ゲーセンと言う思考が高校時から染み付いており、今回もそのつもりで来てしまった。
おしゃれなカフェが軽いぼったくり価格なのは知っていたが、大人になってまでレトくんがゲーセンに行くとも限らないし。
何なら初めから「デート」を優先するべきだったか。
そう遠回しに買うかどうかを考えながら頭を抱えていると、「ん」と短い音が隣から聞こえた。
「…えっ」
「お金、貸すから買いなよ」
そう言って差し出された千円札を、半ば強引に渡された。
「今度返してよ」
それだけ言うと自分の漫画を買うため、レトくんはレジに向かってしまった。
…うわあ、さり気ないところが凄いイケメン。
「…でも、奢ってはくれないのね」
思わずそう呟いてしまったのは内緒である。
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私@ウサギちゃん☆(プロフ) - アキさん» ああああ有難う御座いますんんんんんん (2016年6月29日 22時) (
レス) id: 24b6d4d48a (このIDを非表示/違反報告)
アキ - レトさーんんんんんん (2016年6月29日 20時) (レス) id: 4352fad482 (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 繭子さん» はじめまして！そんなに褒めて頂けて嬉しいです！近くて遠い切ないところも意識して書いているので良かったです！気まぐれ更新ではありますが、頑張ります！ありがとうございます！ (2016年2月10日 7時) (レス) id: c297b50f4f (このIDを非表示/違反報告)
繭子 - はじめまして。今日初めて出会った作品なのですが、この世界感に惹き込まれました！！それぞれの思いが糸のように絡み合う……どこか切ないところに心がウズウズしてます。これからの展開がとても気になります……！！応援してます(*^^*) (2016年2月9日 21時) (レス) id: 60e1ca5364 (このIDを非表示/違反報告)
私@ウサギちゃん☆(プロフ) - 抹茶。さん» そうですね…確かに、知らず知らずと言うのが一番切ない気もしますね…。最近は更新がスローペースになりがちですが、次の展開の為にも頑張ります！ありがとうございます！ (2016年2月8日 21時) (レス) id: a192a87f35 (このIDを非表示/違反報告)
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