CHAPTER 05 総統が恐れるは破滅より孤独 ページ5
「それで、さっきは何を思い出したん？」
「また死んだ誰かのこととか？」と首を傾げる彼に、私は左手の包帯を撫でながら答える。
「…チーノくんのこと」
「ちーのくん？」
記憶を何一つ思い出していないゾムくんは、「チーノくん」が一体誰なのか知らない。
「瓶底眼鏡をかけた、サスペンダー姿の男の子の名前だよ」
「へぇ。そいつ、チーノって言うんや」
「名前思い出せてよかったやん」とゾムくんは笑うと、私の背中を軽く叩いた。
しかしそれに対しては何も答えず、私は話を続ける。
「…そして15人目の、超高校級の才能を持つ男の子だよ」
「！、っえ」
「余ってた一部屋に入るはずだった人だよ。多分、彼の才能は‘‘超高校級の劣等生’’」
空きの個室に置かれていた「超高校級の劣等生」と書かれたプレートがあったはずだ。
それこそが、チーノくんの才能なのだろう。
そして‘‘記憶’’の中で、チーノくんは植物園にいた私を呼んでいた。
つまり彼は、記憶を失う前にこの学園内にいた人物なのだ。
私たちの記憶が消されたあと、何故か彼はこの学園内から居なくなってしまった。
「…確か、‘‘超高校級の劣等生’’は退学処分になったんじゃなかったっけ」
三階の資料室で見つけた資料のことを思い出しながら、ゾムくんは考えるように顎に手を添える。
「退学処分ってことは、‘‘処刑’’とは違うんだよね？」
「何らかの理由で、この学園を追い出されたってことか…」
…何らかの理由って、一体どんな理由？
茶番ちゃんは私たちを追い出すつもりもないみたいだけど、チーノくんは一体どうやってこの学園生活から抜け出したのだろうか？
此処から追い出される際、彼も私たちと同じように記憶を消されてしまったのだろうか？
とにかく、疑問は尽きない。
「まあ…此処から追い出された人間のことを幾ら考えても、仕方ない気がするけど」
「そう、なのかな…」
折角思い出した記憶なのに、結局私たちの記憶を消した張本人には辿り着かない。
それでも、忘れかけていたチーノくんの存在を思い出せたことは大きいだろう。
詳しいことはまだ思い出せないが、彼も学園生活を共にした仲間だったのは間違い無いのだから。
CHAPTER 05 総統が恐れるは破滅より孤独→←CHAPTER 05 総統が恐れるは破滅より孤独
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - 廻りさん» 生存予想で意外だと言って頂けるときが一番楽しいです…！！終盤に近付いてきて、生き残り枠も透けてきた感じがしますね！なんだそのif面白そうですね…！？もう沢山妄想してください、その言葉だけでご飯が進みます^ ^ありがとうございます！頑張ります！！ (2020年9月27日 18時) (
レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
廻り - ifみたいになっちゃいますがゲームのループ物みたいに夢主ちゃんが生存に導いたりするのも楽しそうですよね……物語読みつつそんな妄想が膨らんでいく私であります。それも含めて今最高の気分で9パート全て見終わってきました……これからも頑張って！！！ (2020年9月27日 2時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
廻り - いつも楽しく読んでます！！生存予想とても楽しいです。主戦力が残ってますね…！でもまさかあそこでホビットが…脱出したりするのに必要になりそうだな、とか思ったりしたのですが、とても意外な人でした、楽しい。生存キャラ残り少ないですがもっと続いて欲しい…… (2020年9月27日 2時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - ダリアさん» 読んで頂きありがとうございます！！オシオキは序盤に全員分決めたまま設定を変えていないので、好きと言って頂けて嬉しいです…！！本当にのろのろ更新ですみません！頑張ります！！ (2020年9月21日 18時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - 読ませて頂きました！オシオキめっちゃ好きです。メンバーにぴったりで続きが気になります…！わたうさ様のペースで頑張ってください。 (2020年9月21日 15時) (レス) id: 39bf6c1775 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
