【wrwrd!】ダンガンロンパ Last〜ボクらのカンキンユートピア〜Part9

CHAPTER 05 総統が恐れるは破滅より孤独 ページ8

ずっと一緒にいて、普通に接してくれる彼を見ていると、たまに忘れそうになる。
ゾムくんの才能は‘‘超高校級の通り魔’’だ。
私と出会う前は平然と人を刺していたし、人の命に対する感覚や意識もズレている。
通り魔の被害者やその家族がゾムくんに対して抱く気持ちと、私たちが今グルちゃんに対して抱いている気持ちは変わらないのかもしれない。

…それでも私は、ゾムくんがグルちゃんと‘‘同じ’’には思えないのだ。
友達だから、多少贔屓目にそう見えているだけなのかもしれないが。
ゾムくんを同類扱いしたグルちゃんが許せなくて、私は食事の間、ずっとグルちゃんの方を見ていた。



「俺がいると、折角の食事なのに気も休まらんだろ」

不意にグルちゃんはそう言いながら立ち上がった。
何をしてくるのかと私たち全員が身構えたが、グルちゃんはそのまま出入り口の方へ向かっていった。

「お前らが嫌なら、今後俺は食堂に現れない。但し、食事は誰かが個室の前まで持って来てくれ」

一方的にそう言い切ると、グルちゃんは食堂を出ていってしまった。
彼の背中が見えなくなった途端、張り詰めていた緊張の糸が切れ、肩の力が抜ける。


「…もう食堂には現れないとか言ってましたけど」
「随分あっさりしてたな」

安堵した様子で、ショッピくんとエーミールくんは言った。
しかし私とゾムくんは不安そうな顔を見合わせる。

「でも、誰かが個室の前まで食事を持って来いって言ってたよね…？」
「グルッペンはあんな言い方しとったけど、多分Aちゃんのことやと思うで。食事当番やし」

グルちゃんからしても、ゾムくんたちが素直に食事を持って来てくれるとは思っていないのだろう。
食事を作るついでに、なんだかんだ言って気に掛けてくれる私が持って行くと、彼も思っているはずだ。

「…Aさんが食事を持って来たところを狙って、殺そうとするかも」
「…………」

エーミールくんの言葉に、私は黙り込む。
その空気を察して、ゾムくんとショッピくんが「おい、エミさん！」と声を揃えた。
それにエーミールくんも慌てて「っあ、ごめんなさい」と謝ったが、エーミールくんは何も間違ったことは言っていない。
グルちゃんには前科がある。
そんな彼のところに一人で食事を持っていくなんて、誰がやっても危ないことだ。

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