叶わなくていいから側にいさせて【チェンソーマン】【BL】 (ページ3)

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ニ話ページ3

どれくらい経っただろう。大分落ち着いた俺は枕元に置かれたティッシュで雑に口を拭った。ガタガタと寒気で手が震える。

アキくんが俺の肩に布団をかけて軽く背中を叩いた。その優しさで少し楽になった気がした。

「…ありがとう…。ごめん、最近は無かったんだけど。」

俺は偶に昔の夢を見ることがある。それは決まって同じ夢だ。

「疲れが溜まっていたのかもしれないな。動けそうか？」

淡々と、その中に温もりを持った声で彼が問いかける。

立ち上がろうとするも、身体が震えて上手くいかなかった。

「…駄目みたいだ。身体に力が入らない。」

「分かった。今日は休んでろ、マキマさんには俺から伝えておく。」

「…………あぁ。」

「水、ここに置いとくからな。ストロー持ってくる。」

「…ありがとう。」

扉が閉じられ、俺はまた部屋に一人になった。

「…金なんて手に入るわけねぇよ。」

その呟きはすぐに虚空へと消えた。

寒いのか寒くないのかわからない。いや、寒い。

朝からこんな騒騒しい始まり方をしたことに、自分自身嫌気を覚えた。

ノックと共に閉じられた扉はすぐに開いた。

「A、ストロー刺しておくからな。あと、朝食食べられそうなら置いてある。」

「うん。」

再度扉が彼によって静かに閉められる。

足音が隣に向かい、引き戸が開かれる音がする。

服を脱ぐ音、スーツを着る音。洗面所へ向かう彼の足音。毎日決められたルーティンで生活する彼の動作が容易に想像できる。

…心地いいな。安心する。

身体に体温が戻り始める。暫く聞き入っているとほんの少し扉が開いた

キッチリとしたスーツに身を包み、髪を一本に束ねた彼が顔を覗かせる。

「行ってくる。あまり無理はするなよ。」

「君もね。ありがとう。行ってらっしゃい。」

光が閉じられ、再び暗闇に包まれた。

遠のく足音、靴を履く音。玄関が開き、バタンと閉められ鍵がかかった。

やっぱり好きだな…

家には俺一人だけになった。